写真1●KDDIの小野寺正代表取締役社長兼会長
写真1●KDDIの小野寺正代表取締役社長兼会長
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●国際競争力の強化について,メーカーと通信事業者(オペレータ)に求められる役割の違い
写真2●国際競争力の強化について,メーカーと通信事業者(オペレータ)に求められる役割の違い
[画像のクリックで拡大表示]

 KDDIの小野寺正代表取締役社長兼会長は,7月18日から20日まで東京ビッグサイトで開催中のワイヤレスジャパン2007の基調講演において,同社の戦略について説明した(写真1)。

 小野寺社長はまず,「コンシューマと法人ユーザーではサービスに対する要望がまったく異なる」と指摘。コンシューマ向けには,同社が掲げる固定とモバイル,放送の融合戦略「FMBC」(fixed mobile broadcast convergence)に沿って,ユーザーがデバイスの区別を意識することなく,多様なコンテンツやサービスを利用できる世界を実現していきたいとした。パソコンと携帯の両方で利用できる音楽配信サービス「LISMO」やモバイル向け放送であるワンセグなど,部分的に融合が進むサービスを,同社の次世代ネットワーク構想「ウルトラ3G」(関連記事)で本格的に統合していくとした。

 一方で,法人ユーザー向けには「KDDIはICTプロバイダへ変貌する」という立場を強調した。法人ユーザーからは,システムとネットワークをトータルで提供し,運用やサポート,請求を一本化するようなサービスに大きなニーズがあるという。そこで今後は,「固定やモバイル,WAN,LANを含め,ネットワークをシームレスに提供する。ソフトウエアもSaaS型で提供していく。法人ユーザーはすべての運用をKDDIに頼めばよいような形にしていきたい」(同)とした(関連記事1関連記事2)。

 また小野寺社長は,総務省のモバイルビジネス研究会やICT国際競争力懇談会で話題となった携帯電話の国際競争力についても持論を展開(関連記事)。「国際競争力はもちろん必要だが,メーカーと通信事業者に求められる役割は異なる」と主張した。「通信事業者はあくまで国内のユーザーに対してサービスを展開するのが本業」(同)とし,技術開発や標準化活動を通した海外市場への働きかけはメーカーの役割であることを強調した(写真2)。

 さらに小野寺社長は「通信事業者は自らが開発した通信方式などを標準化活動の中で売り出そうとした途端,周囲の通信事業者やベンダーから反発を受ける。この分野で通信事業者に国際競争力強化を求めるのは難しい。我々も標準化活動に参加しているが,要求を出す立場にとどめている」と語った。