写真●イー・モバイルの種野晴夫取締役副会長
写真●イー・モバイルの種野晴夫取締役副会長
 イー・モバイルの種野晴夫取締役副会長(写真)は7月18日,ワイヤレスジャパン2007の基調講演において,同社の今後の戦略について講演した。

 同社は,2007年3月にサービスを開始した最も若い携帯電話事業者。Windows Mobile対応のPDA端末「EM・ONE」とデータ通信カードを中心に,モバイル環境でのブロードバンド・サービスを提供している。種野副会長は「スマートフォンを使ったサービスについて議論はあるが,我々はデータ通信を中心に付加価値のある新しいジャンルを切り開いていきたい。2008年3月に音声サービスを開始するが,データ通信を重視した端末を広げていきたい」と同社が狙うサービス像を語った。

 種野副会長は,「サービスを開始してから分かった課題もある」ことを明らかにした。その一つが,ITリテラシーが高いユーザーしか獲得できていないこと。「EM・ONEのユーザーは30歳前後が多く,性別はほとんど男性。自宅にパソコンを持つITリテラシーの高いユーザーが多い」(種野副会長)という。EM・ONEの当初のコンセプトは「パソコンがいらない」(同)だったが,そのコンセプトで狙ったユーザー層は獲得的できていない。

 「もう少しITリテラシーが低いユーザーにも買ってもらえるようにしたい」(種野副会長)と考え,その第一弾として投入したのが,7月に開始した「ライトデータプラン」だという(関連記事)。また,「EM・ONEの動作速度などソフトウエア面ではまだ満足していない。次の端末ではもっと改良してマーケットを広げていきたい」と端末にも手を加える方針を示した。

 同時に,ITリテラシーが高い層に向けた戦略も練っている。具体的には,「自宅にパソコンがあることを想定したアプリケーションの搭載を考える。また,保険外交員や車のセールスなど業務に対応したアプリケーションを法人に売り込むことも考えられる」(種野副会長)とした。

 FMC(fixed mobile convergence)戦略については,イー・モバイルの携帯電話を契約するとイー・アクセスのADSLを実質無料で使えるセット料金サービスが,「本当のFMCサービスだと考えている」(種野副会長)との見解を示した。その理由として「FMCは技術ではなく料金が問題になるからだ」とした。種野副会長がDDI時代に手掛けたPHSと家庭用コードレスホンのハンドオーバーを例に挙げ,「ユーザーは二重で基本料金を払うことを嫌がる。PHSのときも,PHSと固定電話の両方の基本料金を払う必要があるため普及しなかった」と分析した。