写真●NTTドコモの中村維夫社長
写真●NTTドコモの中村維夫社長
 「冬の905iシリーズは全機種ワンセグとHSDPAを搭載する。GSM機能も標準で内蔵し,世界中のどこでも使えるようにする」--。7月18日,東京ビッグサイトで開催中のワイヤレスコンファレンス2007(ワイヤレスジャパン2007に併設)の講演でNTTドコモの中村維夫社長(写真)は,この冬に発表予定のFOMAの次機種「FOMA 905iシリーズ」の特徴について説明した。

 中村社長は今後の携帯電話サービスの方向性として,定額制サービスやクレジットなどの生活アシスト・サービス,国際サービスの充実が欠かせないと強調。特に国際サービスの強化については,「アジア地域に重点を置く。ドコモのアジアへの進出も視野にいれてやっていきたい」(中村社長)と語った。

 同社はこれまで,903iシリーズや904iシリーズでW-CDMA方式の第3世代携帯電話(3G)の海外ローミングに対応していた。しかしW-CDMAを採用する地域は多くなく,海外で普及している第2世代のGSM方式への対応が望まれていた。「905iの全機種にGSMを載せることで自分の電話機が世界のどこでも使える。それがやっと可能になる。これはドコモが目指す一歩先への取り組みの一つだ」(中村社長)。

 中村社長は,携帯電話を取り巻く最近の情勢について「アップルがiPhoneを出すなど,これまで想定していなかった企業が競争相手になる時代が訪れている」と語る。だからこそ携帯電話事業者が一歩先へ踏み出す努力が欠かせないとして,同社が一歩先のスローガンとして掲げる「DoCoMo2.0」の取り組みをアピールしていた。

「販売奨励金モデルはなんらかの形で見直していく」

 中村社長は,総務省のモバイルビジネス研究会が6月26日に提出した報告書案(関連記事)に対する考えを示した。

 同研究会が打ち出した販売奨励金の見直しについて,「確かに正論で販売奨励金は時代に合わなくなっている。なんらかの形で見直しをしていく」(中村社長)と語った。ただし同研究会が言及した端末価格と通信料金を明確に分離するプランの導入については,「端末の価格を上げれば端末の出荷台数が減るだろう。端末メーカーや販売代理店の影響も踏まえて考える必要がある」(同)とした。

 また,日本通信とNTTドコモの間でMVNO(仮想移動体通信事業者)に関する相互接続協議が不調なことから,日本通信が総務大臣の裁定を求める申請を出した件についても触れた(関連記事)。中村社長は「我々は決してMVNOに反対しているわけではない。日本通信との間では,料金面で折り合いが付かず裁定になってしまった」と理由を説明した。「MVNOは基本的に事業者に回線をまるごと卸していく形が原則ではないか。日本通信は卸ではなく相互接続の形を求めている。この場合約款を変える必要も出てくる。世界でも例を見ない」(中村社長)と不満を表明した。