ワイヤレスジャパン2007の基調講演に立つNTTドコモの中村維夫社長
ワイヤレスジャパン2007の基調講演に立つNTTドコモの中村維夫社長
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 NTTドコモの中村維夫社長は2007年7月18日、「ワイヤレスジャパン2007」の基調講演で、総務省のモバイルビジネス研究会の報告書で指摘された販売奨励金、SIMロックの廃止、MVNO(仮想移動体通信事業者)接続の3点についてNTTドコモの考え方を示した。このうち、端末価格の値引き原資となっている販売奨励金制度について、見直す方針を明らかにした。

 NTTドコモが負担している販売奨励金は、2006年実績で1台当たり約3万4000円。販売奨励金制度は、携帯電話市場の拡大や高機能端末の普及に一定の役割を果たした一方で、現状では新規に端末を購入するケースより、買い換えが圧倒的に多い。中村社長は、「買い換えを支えるために奨励金の負担を続けることは財務的に厳しい」とし、見直していく方針を明らかにした。

 一方で、「NTTドコモでは店頭で端末がいくらで販売されているのかは全く把握していない」こと、奨励金がなくなることで、年間で約5000万台を発売している携帯電話端末市場の縮小は避けられない点を指摘し、「研究会の提言は正論としてはよく分かるが実現のために解決しなければならない問題は多い」と牽制した。

 携帯電話端末に挿して端末の認証に用いているメモリーカードが、異なる事業者用端末では使用できない、いわゆる「SIMロック」については、第4世代端末が登場する2010年に最終的な結論を出すとした。

 現在主流の第3世代端末では、NTTドコモとソフトバンクモバイルがW-CDMA、auがCDMA2000と、事業者によって採用しているデータ通信方式が異なる。そのため、大半の端末では、契約者がSIMロックを外した状態で利用できるサービスが音声通話、テレビ電話、ショートメッセージサービス(SMS)に限定される。2010年頃に見込まれている次世代のデータ通信方式への切り替えと合わせて、業者を越えた形でSIMを利用する方法を模索する。

 なお、SIMロックの解除については同日、同じくワイヤレスジャパン2007の基調講演に登壇したソフトバンクモバイルの松本徹三副社長も「ユーザーにメリットがない」と言及している。

 MVNOとしてのサービス提供に向け、NTTドコモにネットワークの相互接続を求めていた日本通信が2007年7月9日に総務大臣に対して裁定を求めた件については、「回線卸としての提供ならすぐにでも提供できるが、料金面で折り合わなかった」と状況を説明した。日本通信が求めている事業者間のネットワークをつなぐ相互接続については、「海外でもあまり例がなく、約款ベースから作成しなくてはならないため、時間がかかる」とした。