写真●セールスフォース・ドットコム日本法人の代表取締役社長で米国本社上級副社長の宇陀栄次氏
写真●セールスフォース・ドットコム日本法人の代表取締役社長で米国本社上級副社長の宇陀栄次氏
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 セールスフォース・ドットコム日本法人の代表取締役社長で米国本社の上級副社長でもある宇陀栄次氏は7月11日,東京都内で開催された「IT Japan 2007」において「実用期を迎えたSaaS」と題して講演した(写真)。「今まではシステムをすべて自分で作るか持つしかなかったが,これからはいろんなものを“利用”することによって,もっと効率を高められる時代になっていくのではないか」と語り,必要に応じてインターネット経由でアプリケーションを利用できる「SaaS」(software as a service)が今後さらに普及していくことを強調した。

 講演の中で,宇陀社長は6社のユーザー事例を次々に紹介。例えば,配管設備工事会社の流体計画がオンデマンドCRM「Salesforce」で顧客データを活用して営業効率の向上に成功した例や,損保ジャパンがSalesforceを採用して販促活動を速やかに開始できた例などを披露した。宇陀社長は,同社のユーザーが自前でシステムを構築せずに,セールスフォース・ドットコムのサービスを利用して効果を上げた点を挙げて,「ITにはスピード,すなわち“Time To Market”による投資対効果が今後求められると実感している」と語った。

 さらに,宇陀社長は「今あるビジネスを変えることで,どのように成長できるかが一番重要なポイントだ」と明言。そのためには,システム導入に時間がかからず,利用するだけで済むSaaSの活用を提案する。「所有すること自体に本質な意味はあまりないと思う」(宇陀社長)。それどころか,システムを所有するために一から開発すると時間がかかる。開発している間に周囲の環境が変わってしまい,「結局,効果を出す前に使われなくなってしまうシステムも相当ある」と,宇陀社長は指摘する。

 宇陀社長は,SaaSのメリットとして「すべてのユーザーに対して同じシステム,クオリティ,セキュリティを提供できる」と説明する。すなわち,数人規模の企業から数万人規模の大手企業までが,共通のプラットフォームで同じサービスを利用できるわけだ。「グーグルやアマゾンなどのシステムは,何億人,何十億人にネット経由で使われて培われたシステムであり,相当高度な技術を持っている。我々は,それと同じことに法人向けアプリケーションでチャレンジしようとしている」(宇陀社長)。

 SaaSには,セールスフォース・ドットコムだけではなく,独SAPなど大手のソフト・ベンダーも参入し始めており,競争が激化する模様だ。こうした動きに対して,宇陀社長は「いろんな会社との連携を進めていく」と今後の戦略を語る。具体的には,先日のGoogleとの提携に見られるように,Salesforceと連携可能なアプリケーションを増やしたり,他社のオンデマンド・サービスと連携させた新たなサービスを打ち出したりしていく。「今後はオンデマンドとエコ・システムを考えている。エコ・システムとはすでに世の中にある優れたサービスや携帯電話,ブロードバンド,カーナビなどとも連携しながら新しいサービスを提供するものだ」と宇陀社長は熱く語った。