インターネット検索大手の米Googleから独占禁止法(独禁法)絡みで苦情を突きつけられている米Microsoftは,方針を一転させたようだ。Windows Vista初のサービス・パックであるSP1を当初の社内リリース・スケジュールに間に合わせるため,計画を前倒しして作業に取り組むことにしたという。これまで,Microsoftは「Googleの申し立てで求められた『インスタント・サーチ』機能の仕様変更を行う影響で,Windows Vista SP1ベータ版のリリースを2007年終わりごろにせざるを得ない」としていた。ところが今は,ベータ版を7月,最終版を2007年末に提供するようだ(関連記事「Microsoft,『Windows Vista SP 1』でGoogleに条件付き降伏」)。

 米メディアZDNet.comのMary Jo Foley氏は7月8日(米国時間),情報提供者の名前を隠したうえで,MicrosoftがW2007年11月にWindows Vista SP1と次期サーバーOS「Windows Server 2008」を合わせて製造段階(RTM:Release To Manufacturing)へ移行させる計画,という内容のブログ記事を投稿した。この記事は,筆者が2006年にMicrosoftから聞いた最初のWindows Vista SP1リリース・スケジュールと一致する(面白いことに,それ以来Microsoftは,SP1のスケジュールに関するあらゆる情報を声明で繰り返し否定し続けた)。

 仮にこうしたうわさが真実であると判明すれば,MicrosoftはGoogleの苦情が機能面で際限ない妥協の連鎖を引き起こさないようにするため,Windows Vista SP1の予定を早めていると言える。Microsoftは既にWindows Vista SP1でインスタント・サーチの仕様を若干変更することに合意したものの,Googleは「仕様変更が全く不十分」としている(関連記事「『Windows Vistaの検索機能の仕様変更は不十分』 -- GoogleはMicrosoftの対応に満足していない」)。またGoogleは7月第1週,Microsoftの独禁法違反判決にともなう和解条件の順守状況を監視しているコロンビア特別区連邦地方裁判所の判事であるColleen Kollar-Kotelly氏に申立書を提出し,Microsoftの活動に関する情報提出を許可するよう求めた(関連記事「Microsoftに対する申し立てを諦めないGoogle 」)。

 Windows Vista SP1では,Microsoftが発表したインスタント・サーチの仕様変更に加え,リリース済みのバグ修正をまとめて提供するはずだ。さらに,米Symantecや米McAfeeといった企業からの苦情の中心であるセキュリティ機能に関係し,カーネルも変更する。Microsoftは2006年,筆者に「SP1でWindows Vistaカーネルの大幅更新も実施し,Windows 2008用カーネルのバージョンに合わせる」と伝えた。Foley氏はSP1で「実行されそうな修正」として,ファイル・コピーとシャットダウン処理の微調整,暗号化技術「BitLocker Drive Encryption」の様々な改良,x64システムにおける新BIOS「Extensible Firmware Interface(EFI)」のブート処理対応といった項目を挙げた。ただし,筆者はこれらの変更が本当に行われるかどうかを確認できない。