全国から熱狂的なロボットファンが集まり、サッカー競技を繰り広げた
全国から熱狂的なロボットファンが集まり、サッカー競技を繰り広げた
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幅4.5mのコート内で1チーム3台ずつのロボットが対戦する
幅4.5mのコート内で1チーム3台ずつのロボットが対戦する
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タイから参加のウッタラディット・ダルニー高校「TPA Team」と静岡県浜松工業高等学校の「知的制御研究部チーム」は残念ながら予選敗退となったが、交流を深めるための親善試合をした
タイから参加のウッタラディット・ダルニー高校「TPA Team」と静岡県浜松工業高等学校の「知的制御研究部チーム」は残念ながら予選敗退となったが、交流を深めるための親善試合をした
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宇宙大会の予選選抜競技に参加した3台。左から、たまG(おっくん。氏 作成)、mako-one(まこ氏 作成)、PetaPina(ASIAN GUILD氏 作成)
宇宙大会の予選選抜競技に参加した3台。左から、たまG(おっくん。氏 作成)、mako-one(まこ氏 作成)、PetaPina(ASIAN GUILD氏 作成)
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 2足歩行ロボットによる競技大会「ROBO-ONE SPECIAL CUP」の2日目はいよいよサッカー競技「ROBO-ONE Soccer」による本選が開かれた。前日の予選競技の総合得点で上位16チームが参加し、トーナメントで優勝を決める。サッカーのコートは幅4m50cm。1チーム3台のロボットがコート上でゴールを奪い合う。

 サッカーの試合は1回戦目は5分間。2回戦目以降は前半後半で5分ずつ。制限時間内に決着がつかなかった場合は、チームの中の代表1台が格闘戦をして、勝敗を決める。延長戦のルールについては大会当日になってから発表されたため、参加者からは「PK戦の方がいいのでは」「突然言われても、格闘戦の動作データを用意していない」といった声も聞こえてきた。ROBO-ONE委員会によると、時間を効率的に使うことに加えて、ROBO-ONEらしさを出すための方法として延長戦のルールを決めたという。「ROBO-ONEのルール変更はいつものこと」とあきらめムードの参加者も。ROBO-ONEを勝ち抜くには、こうした不測の事態に対応できる応用力も必要となるようだ。

 実際のサッカー競技では、ロボットの進歩を感じさせる動きが随所に見られた。例えば、予選競技に取り入れられたスローインの動作。ボールがコートの外に出た場合、足を使ってキックインすることも可能だが、手で投げる方法を使えばさまざまな工夫ができる。ボールを持ち上げながら足でステップを踏んで投げる方向を変える、遠くに投げると見せかけて足元に落とすなど、動作に工夫が見られた。ただ、勢いがつきすぎて、投げたボールがコートの反対側まで飛んでしまうことも。用意されたコートは、現在の2足歩行ロボットにとってもはや小さすぎるようだ。1回戦の8試合中で、0対0のまま制限時間の5分間を終えたのは4試合。その後の格闘戦では「マジンガア (SH最強軍団 四川会チーム)」や「YG 不知火(ロボット野郎Aチーム)」などROBO-ONEで上位入賞の経験があるロボットがダウンを奪い、常連の貫禄を見せていた。

 最終的に、決勝に進出したのは、ロボット野郎AチームとROBOSPOT選抜チーム。Aチームの「T-Storm」が山なりのシュートを決めて1点先取。その後、制限時間いっぱいになって、サイドから飛び出たボールをROBOSPOT選抜チームがキックインすると、ボールがゴールに突き刺さる。ただ、サイドからのスローイン/キックインでダイレクトにゴールした場合は得点にならないというルールにより、幻のゴールとなった。結果として、優勝はロボット野郎Aチームとなった。3位は「ロボファイターズF1 チーム」。サッカーでは決着がつかず、延長の格闘戦でキャプテンの「YOGOROZA-V」が「ARIUS(チームアリウス)」を押し倒した。

ロボットが落下してグシャっと砕ける

 ROBO-ONEは2010年にロケットでロボットを宇宙に打ち上げて、格闘競技をする宇宙大会の開催を目標としている。これに向けた選抜競技も開催された。競技の内容は、50cm以上の高さから横方向にロボットを投げ、足裏だけで着地すれば成功というもの。空中で姿勢制御する技術を確立すれば、無重力の宇宙空間でも格闘戦ができるようになるというわけだ。うまく制御できなければ、もちろん、そのまま落下して壊れてしまう。これまでのロボットの常識から考えると、ムチャな競技だ。

 この競技に挑戦した勇気ある参加者は3人。どれもロボットが備えるリアクションホイールを回転させることで姿勢を制御する方式を取っている。傾いている方向に円盤を回転させれば、その反作用で傾きを補正できるというわけだ。1台目の「mako-one(まこ氏 作成)」に続いて2台目の「たまG(おっくん。氏 作成)」が空中に放り出されたが、一瞬のうちに地面に叩きつけられ、足が折れる、ホイールが曲がるなど無残な姿に。ルールでは3回まで挑戦できるものの、1回だけで断念せざるを得なかった。3台目は「PetaPina(ASIAN GUILD氏 作成)」。空中に投げ出された時に、ジャイロセンサーで機体の傾きを検知し、体を開いて回転速度を遅くする。さらにリアクションホイールで姿勢を安定させる仕組みだという。地面への衝突時に一部が壊れたものの、すぐに応急処置を施し、2回目、3回目の挑戦を繰り返すと、着地の一瞬、足で直立したようにも見えた。結果として地面に立つことはできなかったが、将来の成功を予感させる実演だった。

 大会後、ROBO-ONE委員会の西村輝一代表は「新しい規定を追加することで、ロボットの機能を高め、進化させていく」と宇宙大会の実現に向けて技術向上を目指す方針を示した。9月15日から香川県高松市で開催する格闘競技大会「第12回 ROBO-ONE」では「キャッチボール」を規定演技とするという。今後の大会でも、ロボットのさらなる進化を見ることができそうだ。

ROBO-ONE Soccer決勝戦の様子
ROBO-ONE宇宙大会選抜競技の様子