日本版SOX法(J-SOX)の実施基準を実質緩和するとの報道に対し金融庁は、「制度の適用が始まっていない段階で、緩和策を検討することはない。公式な発表をする予定はない」との見解を示した。実施基準について同庁は、「もとから企業ごとに判断してもらえるように数値を例示しているだけ」との姿勢を崩しておらず、実施基準の数値例を参考に、「あくまでも企業側で判断して欲しい」と強調している。

 一方で金融庁は、個別の問い合わせが多かった実施基準の事例のうち、誤解を招きそうな項目についてはQ&A集として公表することを検討している。例えば、業務プロセスにかかる内部統制の評価範囲について実施基準は、「例えば、売上高等の指標を用いて、金額の高い拠点から合算し、全体のおおむね3分の2程度に達するまでの拠点を重要な拠点として選定することにした」と記述しており、厳密な線引きは示していない。

 Q&A集の詳細は不明だが、「実施基準を緩和するのではなく、あくまで解説するという位置づけ」(金融庁)になる見通しだ。Q&A集の公表はこれまで、「金融庁が要否を判断する」(同)として明確に公表されるとは決まっていなかった。

 実施基準の正式名称は、「財務報告にかかる内部統制の評価および監査に関する実施基準」。日本版SOX法に対応するための、実務上の指針(ガイドライン)になる文書だ。日本版SOX法の適用対象となる上場企業やその連結子会社は、実施基準に沿った内部統制の整備が求められている。実施基準は、今年2月15日に金融庁が公表している。