厚生労働省は、国民健康保険の財政調整交付金を算出するシステムの欠陥により、全国の自治体(市町村)に交付する金額を誤って算定していたことを明らかにした。過不足が生じた自治体は「2005年度だけでのべ605市町村」」(厚労省 保険局 国民健康保険課)に上る。結果、支払うべき金額は100億円以上不足していた、とみられる。

 欠陥が見つかったのは、全国の自治体の担当者が交付金を算定する際に利用する「財政調整交付金申請システム」。同システムは、医療費や国庫負担額などを入力すると、自治体の財政状況から交付金額を算出する。各自治体は、算出した交付金額を厚労省に請求するが、金額を算定するロジックに誤りがあった。

 交付金額の算定方法は、厚労省の省令で定められている。省令に基づきプログラムの仕様を策定したが、「システムの一部で仕様が漏れていた」(国民健康保険課)。具体的には、本来は控除されるべき国庫負担や公費などの項目が控除されていない形になっていた。

 財政調整交付金申請システムの実体は、パッケージ・ソフトである。厚労省が中心となって仕様を策定し、「TKC、ゼッタテクノロジー、都築電気、日立情報システムの4社が製品化した」(国民健康保険課)。本来盛り込むべき仕様が仕様書を作成した段階で抜け落ちていたため、いずれのベンダーの製品でも同様のトラブルが起こり得る。

 同システムは、1993年から全国の自治体で導入が始まり、2006年秋に制度改正に伴うシステム改修を実施するまで、欠陥を内包したまま13年間利用され続けていた。システムの欠陥は、本年6月に沖縄県那覇市の職員から指摘を受けて発覚した。