名の知れたLinuxベンダーが過去数カ月間に次々と米Microsoftとの特許クロスライセンス契約を結んでいるのに対し,Microsoftと組むことを拒絶したベンダーはメディアで余り取り上げられなくなった。それでもMicrosoftとの契約を拒むベンダーは増えており,そうしたベンダーは自分たちが体現しているオープンソース・コミュニティ内で支援を得られるはずだ。

 フランスMandrivaのCEOであるFrancois Bancilhon氏は同社のブログに「われわれが事業を進める過程で,Microsoftに守ってもらうことや誰かに金を払うことなど不要と確信している」と書いた。「われわれは,少なくともソフトウエア特許や現在の特許制度の大ファンでない。全体としてみれば,こうしたものはソフトウエア業界とって逆効果になると考える。これまで『Linuxとオープンソース・アプリケーションは何らかの特許を侵害している』とのFUD(恐怖,不安,疑念)を流布する陣営は,確かな証拠を提示してこなかった。そこで民主主義社会の慣習にしたがい,“有罪”が立証されるまで“無罪”とみなし,誠実に活動を続けられる,と考える」(Bancilhon氏)。

 Mandrivaはマン島Canonical(Ubuntu Linuxのディストリビュータ)や米Red Hatと協力し,Microsoftとの特許クロスライセンス契約に対応していく。その結果,Microsoft陣営に入った米Novell,米Linspire,米XandrosなどのLinux企業と反対の立場に立った。Novellを除くと,Microsoftとの契約を結んだLinux企業は,規模が小さく,財政的に不安定なところばかりだ(関連記事その1その2その3)。これに対し,MandrivaとRed HatはLinuxベンダーのなかで最も力があり,両社がMicrosoftの申し出を断ったことは注目に値する。

 Ubuntu Linuxを立ち上げたMark Shuttleworth氏は自身のブログで6月16日,「詳細が明かされていない特許侵害で脅されている状況では,いかなる合意に向けてもMicrosoftとの協議を行わない,と断った」とした。「『詳細不明の特許に対する侵害』を主張したところで,何ら影響はない。そうした主張に法的なメリットがあるとは思えないし,われわれが共同で実現できる素晴らしい対象において,Microsoftと協力することに魅力を感じない。Microsoftの『詳細不明の特許に対する侵害を訴えない』という約束には,全く価値がなく,金を払う意味もない。この約束は,純然たる特許所有者による特許訴訟という本物のリスクから,ユーザーを守らない(Microsoft自体もこうした特許の侵害を頻繁に見つけられ,訴えを起こされている)」(Shuttleworth氏)。

 Shuttleworth氏はよいポイントをいくつか挙げたが,Microsoftとのクロスライセンス契約に価値がないかどうかは不明確だ。特に小さなオープンソース企業は,こうでもしないとエンタープライズ市場に食い込む方法はないだろう。当然,ここで本物の金が関係する。さらにリスクを嫌う企業は,潜在的な特許問題をはらんでいる技術よりも,安全性の高いものを選ぶ可能性が高い。