平井たくや衆議院議員
平井たくや衆議院議員
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 電子政府も国から地方へ、官から民へ――衆議院議員で自由民主党経済産業部会長、u-Japan特命委員会事務局長を務める平井たくや氏は、6月19日に開催された「ITガバナンス・シンポジウム2007」の基調講演において、電子政府の「ITリロケーション構想」について語った。

 平井氏は、「これからのサービスは供給側中心主義から市民・顧客がやりたいことを実現するシチズン・セントリック(市民・顧客中心主義)へと進化していくであろうこと」「コールセンター、データセンター等の地方進出が増えていること」「テレワークなど時間・場所にとらわれない勤務形態が増えており国においても働きかたが変わっていく可能性があること」「一部の外国政府においては既に間接業務のシェアードサービス化に取り組んでいること」など、電子政府と取り巻く社会環境の変化を指摘。こうした背景から、電子政府のあるべき姿として、業務プロセス、システムを徹底的に見直したうえでのアウトソーシング施策「ITリロケーション構想」を示した。

 「国から地方へ、官から民へ」を目標とする「ITリロケーション」実現までを、平井氏は4つの段階に分けて説明する。まず「バックアップ機能を地方へ」という第1段階。「地震大国の日本でBCP計画を立ててていけば当然考えられること。各役所が既に沖縄などに移動させている。日本は現在、この段階のまっただ中にいる」(平井氏)。

 続く第2段階は「システムを地方へ」。つまり、システムそのものを地方へ移転する。平井氏は「システムも別に霞ヶ関近郊に置いておく必要はない。地震が少ないところ、あるいは、空調の電力消費問題を考えれば、気温の低い地域にサーバーを持って行くことも考えられる」としたうえで「運用業務が地域で発生するという意味では、対応できる人材がいる地域に移転していくだろう。自治体間の前向きな競争のなかで考えていけばよいのではないか」と続けた。

 第3段階は「業務を地方へ」。例えば、中央官庁の給与計算はA県、旅費の精算はB県といった形でシステムに付随する業務を地方自治体へ切り出して移譲する。「既にインターナショナルな企業は、フラット化した世界の中でこうしたことを行っている。それを政府もできるようになるということ」と平井氏は説明する。

 最後の第4段階は「地方から民間へ」。地方自治体に移譲した業務を民間に開放する。「第3段階、第4段階まで進めば、そのときには新たな産業が生まれているのではないか」(平井氏)。

 講演の最後に平井氏は「これは自由民主党の公約でもある」としたうえで、近く行われる参議院議員選挙における自民党の「155の約束」のうちの一つを引用した。

097. システム効率化・集中化の推進
中央政府が率先して人事、給与、会計などの間接部門の業務システムについて統合・一元化し、地方移転や業務自体の民間委託を進め、これにより、政府の業務・システムの抜本的な効率化と地域ICT(情報通信)産業の振興を図る。

 そして、「これはまさにITリロケーションそのもの。1年2年先にすべてそうなるわけではないが、将来はこのようにしないと人口が減少していく日本の全体最適化は図れない。小さな公約ではあるが、50年先の社会に向けて中長期的に意味のある公約であると思う」と締めくくった。