アクセンチュアは2007年6月19日、日本を含む22カ国を対象に実施した「各国政府の顧客サービス成熟調査2007」の結果を発表した。日本は総合的な顧客サービス成熟ランキングで22カ国中10位にランクインした。1位はシンガポール、2位はカナダ、3位は米国。以下、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドと北欧勢が続いた。

顧客サービス成熟度・国別ランキング
図1●顧客サービス成熟度・国別ランキング(12位まで)
出典:アクセンチュア

 調査では、各国から任意に選抜された18歳以上の市民400人、総計約9000人を対象に2007年1月に実施した電話アンケート(国民調査)や、政府高官へのヒアリングを実施し、各国の中央政府による顧客(国民)サービスの成熟度を総合的に評価した。国民の声を直接評価に反映させたのは今回が初めてとなる。

 アクセンチュアでは2000年から毎年、電子政府サービスに関する調査を行ってきたが、2006年からは行政サービス全般を評価している。2006年の調査ではランキングを行わなかったため、今回は2005年以来のランキング発表となった。日本は2005年ランキングの総合同点5位(22カ国中)から大きく順位を落としたが、その理由について、アクセンチュア官公庁本部エグゼクティブ・パートナーの後藤浩氏は「オンラインサービスの利用が進んでいないことが理由」と分析した。

 「従来はサービスのオンライン化度を測定する『サービス成熟度』指標が全体評価の加重度の50%だったが、各国ともオンライン化が進んでいるため指標の加重度を10%に下げ、新たに『国民の声』という評価軸を加えて加重度を40%とした。日本は行政サービスのオンライン提供度ではかなり上位に入るが、実際の利用が進んでいない。インターネットや電話などのマルチチャネル化がうまく図れていないため、効率的な顧客サービスの提供に結びついていないため10位という結果になった」(後藤氏)。

 各要素の加重度を変更したことで、前回1位のカナダと2位の米国がそれぞれ2位と3位に落ち、代わりに前回4位のシンガポールが1位となった。「デンマークやノルウェー、フィンランドといった北欧諸国は『国民の声』における評価が非常に高かったためランクアップした」(後藤氏)という。

日本の行政サービスは窓口偏重、国民ニーズをすくい切れていない

 国民の声を直接聞いたアンケートの結果から、1位のシンガポールと10位の日本とに違いについても発表された。

 「過去1年間に行政に対して問い合わせを行った際に利用したチャネル」という問い(複数回答可)については、日本の場合は96%が窓口に問い合わせたことがあるとしている。電話は31%でインターネットはわずか5%に過ぎない。一方シンガポールは窓口が31%で、電話が55%、インターネットを利用した人は37%となっている。

 「行政機関への問い合わせに利用したいチャネル」(複数回答可)については、日本は窓口30%、電話12%、インターネット25%。シンガポールは窓口22%、電話28%、インターネット22%となっている。

日本とシンガポールの国民調査結果比較(1)
図2●日本とシンガポールの国民調査結果比較(1)──昨年1年間に行政機関に問い合わせを行った際に利用したチャネル
出典:アクセンチュア

日本とシンガポールの国民調査結果比較(2)
図3●日本とシンガポールの国民調査結果比較(2)──行政機関への問い合わせに利用したいチャネル
出典:アクセンチュア

 「シンガポールの場合は利用したいチャネルの志向と利用の仕方がほとんど一致しており、現実の利用と国民の希望との間にほとんどギャップがない。これに対し、日本は96%が窓口を利用しているが、利用したい人は30%に過ぎない。一方インターネットは5%が過去1年間に利用しているが、25%が期待している。窓口が今の利用の3分の1に減って、インターネット利用が5倍になると、サービスに対する国民の期待と現実のギャップが埋まるようなイメージになる」(後藤氏)。

 続けて後藤氏は「日本は、既に整備ができているオンラインサービスの利用促進を図ることで、効率的な顧客サービスを提供できるようにすべきだ」と、ニーズがあり仕組みも出来上がっている電子政府の積極活用を提言した。

(安藏 靖志=フリーライター)