写真:マイクロソフト最高技術責任者の加治佐俊一氏
写真:マイクロソフト最高技術責任者の加治佐俊一氏
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 米Microsoftのロボット用アプリケーション開発ツールである「Robotics Studio」。同社がこのような開発ツールをリリースしたきっかけは「Bill Gates会長が2004年春に,(ラジコンやロボット・キットのメーカーである)近藤科学が販売する自作ロボット・キットを見て感銘を受け,『すべての家庭にロボットを』と決断したから」という。6月18日に都内で開催された「WinHEC 2007 Tokyo」の基調講演で,マイクロソフト日本法人の最高技術責任者である加治佐俊一氏が,こんな逸話を披露した。

 マイクロソフトの加治佐氏(写真)は,ソフトウエア開発者は自作ロボットに注目すべきだと主張する。その根拠となっているのが,「超並列処理」への挑戦だ。現在プロセッサは,コアの数が「デュアルコア」「クアッドコア」といった具合に,倍々ゲームの様に増えつつある。近い将来,大量のプロセッサ・コアを実装する「メニーコア・プロセッサ」が登場するのは確実であり,「メニーコア時代には,プログラマは超並列処理と,それに伴う複雑さの解消に挑戦しなくてはならない」(加治佐氏)。

 超並列実行が可能なアプリケーションの開発環境として,Microsoftは現在「Concurrency and Coordination Runtime(CCR)」という「.NET Framework上で,複雑に絡み合った処理を並列処理できる実行環境」(加治佐氏)を開発している。そのCCRをいち早く採用したのが,同社が2006年12月にリリースしたロボット用の開発ツール「Robotics Studio」なのだという。

超並列実行時代を先導するのは「ロボット」

 加治佐氏は,「現在のロボットには,たくさんのセンサーが搭載されており,常に大量の情報の入力がある。ロボットは,そうした入力を受け付けつつ,大量のアクチュエータ(ロボットの関節などを動かす機構)を動かさなければならない。まさに並列処理が必要とされている分野であり,CCRを導入するのが有効だった」と語る。

 加治佐氏はまた,Robotics Studioが登場した背景に,Bill Gates氏の存在があることを明らかにした。「Robotics Studioが開発されたのは,Bill Gates会長が2004年春に,近藤科学が販売する二足歩行ロボット・キットを見て感銘を受けたからだ」。Gates会長はそのロボット・キットを見て,「すべての家庭にロボットを」と決断したという。

 「マニアがキットを購入してロボットを自作している現状は,1970年代のパソコン黎明期に酷似しており,大きな成長が期待できる」と加治佐氏。「Microsoftは創業当時,パソコン・キット向けにBASICを提供することで,統一したプログラミング環境を実現した。それと同じように,ロボットに対しても様々なロボットのテクノロジをつなげられる開発環境を提供する」と話す。

 Robotics Studioは英語版しかないが,日本ではRobotics Studioを解説する書籍も登場している。実は,Robotics Studioに関する書籍が登場したのは,日本が「世界初」なのだという。加治佐氏は「ロボットには,次の可能性が秘められている」と強調し,コンピューティングの今後を占う上で,ロボットに注目する重要性を強調した。