東芝の藤井氏。BD陣営に対抗した強気の発言で有名だが、この日は現状を冷静に捉えた発言が目立った
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HD DVDレコーダーの新製品「RD-A600」。2番組同時録画機能、600GBの内蔵HDDを備えつつ約20万円に抑え、国内次世代光ディスク市場の本格開拓に乗り出す
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 東芝は2007年6月12日、HD DVD関連製品の出荷状況について明らかにした。パソコン向けのHD DVDドライブは堅調に推移しているものの、HD DVDプレーヤーやHD DVDレコーダーなどのAV機器は厳しい状況だという。同日開催したHD DVDレコーダーの新製品発表会で、東芝 執行役上席常務の藤井美英氏が言及した。

HD DVDドライブは100万台を出荷

 HD DVDドライブの全世界での累計出荷台数は、2007年4月時点で100万台を突破。パソコン向け製品が好調で、「北米では、1500ドル程度のパソコンにHD DVDドライブが載り始めている。パソコンでハイビジョン画質の映像ソフトを視聴することが一つの潮流になりつつある」(藤井氏)と言う。東芝のほかに、台湾ASUSTeK Computer、台湾Acer、独Fujitsu Siemens Computers、米Gateway、米Hewlett-Packard、独Medion、韓国Samsung ElectronicsがHD DVD搭載パソコンの出荷を始めている。

 一方で、HD DVDプレーヤーやHD DVDレコーダーなどAV機器としての用途は、まだ道半ばである。最大市場である北米では、HD DVDプレーヤーの累計出荷台数が約15万台。競合規格であるBlu-ray Disc(BD)は、プレイステーション 3(PS3)も含めるとプレーヤーの出荷台数でHD DVDを大幅に上回るとみられる。

「機器は売れていないが、映像ソフトは互角」

 藤井氏は2007年1月の「2007 International CES」において、2007年中に北米で180万台のHD DVDプレーヤーを出荷するとの目標を掲げていたが、これについて「下方修正せざるを得ない」と明らかにした。「BD陣営からも低価格機が出て市場が活性化されると思っていたが、現時点でそうはなっていない。薄型テレビは32型以上のハイビジョン製品が2007年だけで5000万台出荷される見込みだが、薄型テレビ市場だけの盛り上がりにとどまっており、光ディスクに波及していないのが現状。最低ラインとして、2007年に北米で100万台は売りたいと考えている」(藤井氏)。

 ただし、映像ソフト販売についてはHD DVDも健闘しているという。北米ではHD DVD対応の映像ソフトが238タイトル発売され、累計で120万本出荷された。「BD対応機器の方がHD DVD対応機器より4倍売れているなら、映像ソフトも4倍売れていいはず。しかし実際には、BDとHD DVDの映像ソフトの売れ行きはほとんど変わらない。PS3でBDの映画ソフトを視聴しているユーザーは、ソニーが主張するほど多くは存在していない」(米Universal Studios Home Entertainment Executive Vice PresidentのKen Graffeo氏)と、対応機器の出荷台数が少ない割に善戦しているとの見方を示した。

低迷する日本市場に戦略商品を投入

 日本市場において、HD DVDプレーヤーは米国市場よりもさらに厳しい状況にあるようだ。