楽天技術研究所 代表の森正弥氏
楽天技術研究所 代表の森正弥氏
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Rubyで開発を行った結果,生産性だけでなく,セキュリティやパフォーマンスでも良好な結果が得られたという
Rubyで開発を行った結果,生産性だけでなく,セキュリティやパフォーマンスでも良好な結果が得られたという
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 「楽天市場の実際のサービスを開発してみた結果,Rubyの生産性は他言語の1.6~3倍だった」---楽天技術研究所 代表の森正弥氏は6月10日,日本Ruby会議2007でこう語った。楽天は6月,まつもとゆきひろ氏を研究部門である楽天技術研究所のフェローに招いている。

 楽天のサーバーは現在数千台規模。開発体制も委託を含めれば1000人規模となっている。開発環境としてはJavaやLAMPなどを主に利用しており「成熟した感もある」(森氏)。その中で「最先端のサービスを提供するために,10年前の創業時,数人で作っていたころのようなチャレンジを行いたい」(森氏)と2006年に設立したのが楽天技術研究所だ。

 そして「RubyやRailsで開発をやりたい,という熱い思いから」(森氏)楽天のエンジニア有志が集まり,2006年8月にまつもと氏とブレーンストーミングを行い,2006年11月,十数名によるRuby開発プロジェクトを立ち上げた。「社内向けシステムではなく,あえて顧客が使用するフロントのシステムに適用した」(森氏)。Ruby on Rails,Rails Platform,FasCGI,MySQL,Debian GNU/Linuxなどを使用している。

 その結果,生産性だけでなく,セキュリティも外部の監査で問題ないことが確認された。パフォーマンスも,複雑な処理はまだこれからだが,単純な処理であれば問題ない。ただし運用性においては,既存の社内のツールは使えたものの,まだノウハウが不足しており,今後運用スクリプトなどを整備していく必要があるという。

 「はやい!楽しい!大規模サービスで使えて嬉しい!と社内の一大ブームになった。エンジニアの勇気が評価され,社内で『楽天賞』を受賞した」(森氏)。

 6月から,Rubyをさらに多くのサービスで使用するための「Rubyプロジェクト第二段」を開始する。70名を対象Rubyの講習,7月には100名にRailsの講習を実施する。「仲間を増やしてRubyを社内標準の一つにしたい。日本Rubyの会に貢献できるエンジニア集団になりたい」(森氏)。

 まつもと氏を楽天技術研究所のフェローに招いたことで,行いたいのは独自の研究開発だという。「具体的にはこれからだが,まつもと氏のアイデアを実装していきたい」と,森氏は将来へ向けての夢を語った。

【訂正】
掲載当初「楽天の研究子会社である楽天技術研究所」と記述しておりましたが誤りで,正しくは「楽天の研究部門である楽天技術研究所」です。お詫びして訂正いたします。