アイスタイル代表取締役兼CEOの吉松徹郎氏
アイスタイル代表取締役兼CEOの吉松徹郎氏
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カカクコム取締役CTOの安田幹広氏
カカクコム取締役CTOの安田幹広氏
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はてな取締役経営企画担当の輿水宏哲氏
はてな取締役経営企画担当の輿水宏哲氏
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 6月6日,7日の2日間,東京ミッドタウンで行われた「NET Marketing Forum」2日目最後のプログラムは,「失敗しないクチコミ/ソーシャル・メディア・マーケティングとは?」と題したパネル・ディスカッション。ネット上でクチコミ事業を展開しているアイスタイル,カカクコム,はてなの幹部が登壇し,消費者の声を生かすマーケティングについて議論した。

 冒頭,各社がそれぞれ事業概要や現状について説明した。アイスタイルは,化粧品クチコミ情報サイト「@cosme(アットコスメ)」の運営企業。サイト来訪者は月170万人,クチコミの蓄積は480件にのぼり,これをデータベース化して化粧品メーカーが分析,商品開発に生かしている。今年3月には新宿ルミネに「@cosme store」を開店。クチコミ・ランキング上位商品をそろえ,ブランド・チャネル横断型のリアル店舗展開にも乗り出している。

 カカクコムは,価格比較サイト「価格.com」の運営企業。AV・家電製品を中心にクチコミ・レビューや最安価格情報,詳細なスペック情報が載っており,買い物前の下調べの場になっている。サイト来訪者は月800万人超,書き込みは件数は600万件を突破した。店舗側,メーカー側は,書き込み内容や製品ページのアクセス数推移などからユーザー・ニーズを把握して価格設定,製品開発に生かすことができる。昨年暮れには,企業側が価格.com上でユーザーに向けて情報発信できるサービス「価格.com CRM Base」の提供を始めた。

 はてなは,ブログ(はてなダイアリー),Q&Aサイト(人力検索はてな),ソーシャル・ブックマック(はてなブックマーク),写真共有サイト(はてなフォトライフ)など,ユーザーがコンテンツを作るサービスを展開し,クチコミ文化を牽引してきた。月6億9000万ページビュー,利用者数は900万人を超える。

 その後,モデレーターから「クチコミマーケティングの成功例」「うまい仕掛け方」「“炎上”の原因と対策」といったお題が出され,実例を交えて議論した。

 クチコミ・マーケティングについては3社とも,「内容をコントロールすることはできない。無理にコントロールすれば失敗する」という意見で一致した。カカクコム取締役CTOの安田幹広氏は,「書き込みで満足度が高い商品をランキングすると,実際の市場シェアとは必ずしも比例しない。地味ながらコストパフォーマンスに優れたものづくりができている商品はしっかり評価されている」と語った。

 それを理解したうえでクチコミ・マーケティングを積極的に仕掛けて際の留意点として,アイスタイル代表取締役兼CEOの吉松徹郎氏は,「やみくもに『よく書いてほしい』と言っても効果はない。例えばしわ取りの商品を10代に訴求しても意味がないし,厳しい批評を多く書く人にアプローチするのも得策ではない。誰に書いてもらうか,起点づくりがすごく大事」と指摘した。

 クチコミ成功例では,今年春,ディスプレイ・メーカーのナナオが展開した「カラー・ユニバーサルデザイン対応ワイドモニター」の例が挙がった。「はてなダイアリーで記事を書くとワイドモニターが当たる」というキャペーンだったが,このモニターは日本で300万人以上いる色弱者に配慮した製品で,色弱者から見る色覚シミュレーション動画が話題となり,ブログで数多く取り上げられて社会的にも意義のあるキャンペーンとなった。

 炎上例については,「はてなブックマーク」が間接的に関与した例が聴衆の関心を集めた。ある会社が自社テレビCMをYouTubeにアップロードし,社員や広告代理店関係者40~50人が一斉にはてなブックマークに登録。はてなのトップページに人気ページとして表示され,不審を抱いたユーザーが調べると,ブックマーク登録者のほとんどがIDを取得した直後で,他のページをほとんどブックマークしていなかったことから,“仕込み”であることがバレ,しばらくバッシングが起きてネガティブな印象が残ってしまったという。はてな取締役経営企画担当の輿水宏哲氏は,「“仕込み”に簡単に踊らされるほどネットユーザーは愚かではない。自社でクチコミ・キャンペーンをやる例が今後増えていくと思うが,経験がある人や企業と組んでやれば初歩的な間違いは起こさずに済む」と指摘した。

 最後にクチコミを上手に活用したい企業に向けて,「まず一消費者として買う立場に立って実際にクチコミ・メディアを使ってみる。自社の評判も日々チェックして,特性を理解することが大切」(カカクコム安田氏)など,アドバイスを送って締めくくった。