米インテルがUltra-Mobile PC(UMPC)などモバイル機器向けの事業に全力で取り組んでいる。台湾・台北市で開催中の「COMPUTEX TAIPEI 2007」に合わせ2007年6月7日に開いた報道関係者向け説明会で、同社 上級副社長のAnand Chandrasekher氏は「2008年上期に投入予定のモバイル機器向けプラットフォームであるMenlow(開発コード名)によって、一切の妥協を廃した無線インターネットの世界を実現してみせる」と意気込みを語った。
「イノベーションの旗手、最初はみんなひとりぼっち」
Chandrasekher氏はプレゼンテーションの冒頭、イノベーションの事例として2枚の写真を観客に見せ、これは何かと問うた。1枚目は1932年に開発されたテレビである。もっとも当時はテレビという言葉がまだ定着しておらず、“Radio-TV Receiver”と呼ばれていた。2枚目は1973年に米BusinessWeek誌に掲載された、携帯電話の試作機に関する記事と写真である。
「我々の提唱するUMPCやMID(Mobile Internet Devices:UMPCの派生型で、個人向けに特化したモバイル機器)は、パソコンなのか携帯電話なのかと問われることがある。しかし実際にはそのどちらでもない。新しいカテゴリーを作ろうとしているのだ。新たなイノベーションが生まれるときは、大抵ひとりぼっちなものだ」とChandrasekher氏は語り、将来は一大カテゴリーを確立できるとの自信を示した。
「今のモバイルは、Web閲覧という点で不完全」
Chandrasekher氏はコンピューティングの世界における直近のトレンドについて、(1)モバイルWiMAXなどを用いた無線環境でのブロードバンド接続の普及(2)MySpaceやYouTube、Second Lifeなどにより、個々人の嗜好に合わせパーソナライズされたインターネットの利用(3)モバイル機器の相次ぐ製品化――の3点を挙げ、「無線インターネットが次の潮流になる」とした。
その上でChandrasekher氏は、現行のモバイル機器でYouTubeやMySpaceを楽しもうとしても機能が制限されてしまうことを指摘。また、Windows Mobileや独自OS上でのWebサイト閲覧ではエラーの発生率が高いとして、「単なる無線インターネットではだめ。パソコンとの互換性を確保し、静止画や動画も表示できるパフォーマンスを備え、常にインターネットにつながる環境が必要だ。それで初めて、妥協のない無線インターネットといえる」と主張した。
「Menlowは始まりに過ぎない。次々に改良版を投入する」
インテルは2007年4月に開催した開発者向け会議において、UMPC向け新CPUの「Silverthorne」(開発コード名)と、これにチップセットと通信制御LSIを合わせて集積したプラットフォーム「Menlow」(開発コード名)を、2008年上半期に出荷する予定。デスクトップパソコン向けCPUと同様に45nmルールを採用し、消費電力の低減と実装面積の縮小を図る。「Silverthorneは1台湾ドル硬貨より小さく、Menlowもトランプ1枚分程度の実装面積で済む」(Chandrasekher氏)。
この日の説明会では新たに、ベルギーのOptionがMenlow向けに携帯電話の通信制御LSIを供給することを発表。これにより機器メーカーは、GSMの高速版であるEDGEと、W-CDMAの高速版であるHSPAの通信モジュールを組み込んだUMPCを容易に設計できるようになる。「同様に、モバイルWiMAXや無線LANなども容易に組み込めるよう、幅広い種類の通信制御LSIを提供できる体制を整える」(Chandrasekher氏)。
さらにChandrasekher氏は、「Menlowは始まりに過ぎない。ノートパソコン向けプラットフォームのCentrinoが年々進化しているのと同様に、次々に改良版を投入していく」と語り、UMPC分野の開拓へインテルが全力で取り組む姿勢を明確にした。