日立製作所はGPS機能を持った携帯電話を使って、地図上に履歴を記録するサイト「Ittemia(イッテミア)」(http://ittemia.jp)を開始した。サイト内の地図上に印をつけた地点へ、GPS携帯を持ったユーザーが到着するとそれを通知する“スタンプラリー”のような機能を持つ。08年3月までに30万人の無料会員の登録を目指す。

 Ittemiaでは、最初に主催者となるユーザーが地図上に目標地点を設定する。その地点に到着した別ユーザーは、GPS機能つき携帯電話(au、ドコモ)から専用携帯サイトにアクセスして、目標地点に到着したことを知らせる。Webサイト上では、誰がいつ到着して、どんなコメントを残したか、などの履歴を見ることができる。これらを使うことで、史跡めぐりやオリエンテーリングのスタンプラリーと同じようなサービスを提供する。

 同サービスは会員登録すれば無料で使える。「広告モデルや企業利用による課金なども考えられるが、短期的な収益モデルを目標としていない。まずは利用してもらって、ユーザーが増えてから考えること」と日立製作所先端情報システム研究開発本部先端ビジネス開発センタの武田景主任技師は話す。

 Ittemiaを運営するのはソフトウエア事業部。同事業部ではこうした新規事業の種の開発に力を入れ始めており、Ittemiaはその最初のプロジェクトという位置づけだ。Web2.0的なサービスを成功させるには、まずは無料サービスであることが前提となる。その中で投資回収しやすくするには、あらかじめ開発コストを極力下げなければならない。そこで、Ittmiaは約半年という短期間で開発を済ませ、アルプスの地図サービスをマッシュアップとして利用するなどしてコストを抑えた。

 もう一つ不思議なことがある。同社ソフトウエア事業部は企業向け情報システムのミドルウエアなどを開発、販売しており、BtoBをビジネス基盤としている。その部門で、BtoC向けサービスを始めるというのは異例だと言える。「現在、ソフトウエアやWebサービスなどの分野で、企業向けとコンシューマ向けという区分はあいまいになってきている。(これまでやってこなかった)コンシューマ向けサービスを探る意味でも重要な取り組みだと考えている」(武田氏)。投資回収の見通しや事業の継続性などはまだまだ不透明だが、大きく化ける可能性もある。日立の挑戦は始まったばかりだ。