写真●NTTデータ ECソリューション ビジネスユニットの藤村剛課長
写真●NTTデータ ECソリューション ビジネスユニットの藤村剛課長
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 「これからは,ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使って広く情報を露出するだけではなく,ユーザーとの間にどのような関係を構築できるかが重要になる」――。NTTデータ ECソリューション ビジネスユニットの藤村剛課長は,企業によるブログ,SNS利用の方向性をこう分析する(写真)。同課長は,6月6日から7日にかけて開催されている「NET Marketing Forum」で,NTTデータが手がけたシステム構築事例を交えながら,企業が顧客接点の一つとして取り組みを始めている,ブログの動向を紹介した。

 藤村課長によると,企業のブログは大きく三つのタイプに分かれるという。(1)企業からの情報発信タイプ,(2)ユーザー主導の情報発信タイプ,(3)企業によるテーマ設定に基づいてユーザーが情報を発信するタイプ,である。最近はいくつかのタイプを兼ね備えるブログがあるという。

 その代表例が,三越の「三越コミュニティブログ」である。店舗などが顧客向けに商品情報などを配信するほか,顧客もブログに情報を書き込むことができるようにしている。顧客が店舗を訪れたらデジタルカメラを渡し,店内を取材してもらう。顧客視点の店内レポートをブログに書き込んでもらう,という取り組みである。「現場の担当者からの情報配信では,内容に限界がある。そこは顧客の力を借りる手法だ」(藤村課長)。

 ダイエットにテーマを絞っているのは,キリン ヤクルト ネクステージのブログ「リエータ・カフェ」。一人では長続きしないダイエットを,ほかのユーザーと情報共有することで楽しんで継続できるようにするためのサイトである。日々の食事や,体重,体脂肪率などの情報を登録し,管理する機能を提供している。現在の会員数は2万人に達しているという。「キリン ヤクルト ネクステージは,会員の生の声をキャッチアップできる顧客接点と位置付けている」(藤村課長)。

 パイオニアは,ブログと実ビジネスの連携を強めているという。パイオニアの「スマートループ構想」は,カーナビが持つ走行速度や自動車位置などの情報を,複数のユーザーで共有して役立てようというもの。その一環として,ブログとの連携を実現させた。顧客が,同社が構築した「スマートループ ドットログ」に,気に入ったお店の情報やその印象などを登録すると,カーナビにそれをダウンロードできる。

 このような各社の取り組みは,「企業が集めた情報を漫然と提供するのではなく,ユーザーも巻き込むことで,結果的に商品の価値を高めるのが狙い」と,藤村課長は分析する。「顧客接点としてのブログは,顧客との関係を構築するための強力なツールになりうる。今後はどこまでリアルなビジネスとの連携を強化できるかが課題になるだろう」(藤村課長)。