施策について語る、マイクロソフトの瀬戸口靜美氏
施策について語る、マイクロソフトの瀬戸口靜美氏
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ホームユーザー向けに新たに用意する施策の一覧
ホームユーザー向けに新たに用意する施策の一覧
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トレーニングセンターで講習を受けたICTマスターが、ICTスクールで講師となる。ICT検定もICTスクールで実施する
トレーニングセンターで講習を受けたICTマスターが、ICTスクールで講師となる。ICT検定もICTスクールで実施する
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ICTマスターには、自治体に対する支援スタッフやNPOのリーダーなどとしての活躍も期待している
ICTマスターには、自治体に対する支援スタッフやNPOのリーダーなどとしての活躍も期待している
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 マイクロソフトは2007年5月30日、家庭でパソコンを使うユーザー向けの検定試験「マイクロソフト ICT検定」(以下、ICT検定)を開始すると発表した。インターネットやデジタルカメラ、ブログの使い方や、セキュリティ対策の基礎など、家庭でパソコンを楽しむために必要な項目が題材となっているのが特徴。同時に、初心者ユーザーや高齢者などにパソコンの使い方を教えるインストラクターの認定制度「マイクロソフト認定 ICTマスター」(以下、ICTマスター)も発表。インストラクターの人材育成を図ることで、パソコンを学べる場を地方にも増やし、パソコンユーザーの拡大やスキル向上を促進する狙いだ。ICT検定およびICTマスター資格の認定は、2007年7月1日に開始される。ICT検定は最初の1年間で3万人の受験を目標とする。一方のICTマスターは、1年間で2000名の認定が目標だ。

 マイクロソフトはこれまで、ICT(information and communication technology)に関するビジネスユーザー向けの講習やスキル検定などは豊富に用意してきた。だがホームユーザー向けの施策は「すっぽり抜け落ちていた」(SMS&P Plan-J推進本部 市場開発部の森本登志男部長)。ホームユーザーの受け皿となっていたのは地域の小規模なパソコン教室やNPOなどの非営利団体。人材も資金も十分でない中で自力で学習環境を用意し、教材も独自に開発するほかなかった。また地域によってはパソコン教室そのものがないことも珍しくなく、パソコンを使い始めようとするシニア層などには壁となっていた。今回の発表は、こうした状況に対応するものだ。基本的に同社は「CSR(企業の社会的責任)に取り組むために大きな礎となる施策」(業務執行役員 テクニカルソリューション推進統括本部の瀬戸口靜美統括本部長)と、社会貢献の一環として位置付けているが、ゆくゆくは同社製品のユーザー獲得につながるとの期待も持っている。

 パソコンのトレーニングにおいて重要となるのは「コンテンツと、インストラクターのスキル」(テクニカルソリューション推進本部 ラーニングソリューション部の内野良昭シニアマネージャー)。そこで、この両面において施策を展開する。まずコンテンツについては、ICT検定(愛称は「マイ検」)と、受験に必要な知識を学ぶためのテキストをマイクロソフトが用意。既存の検定や解説書がソフトの操作法取得を主眼にしていたのに対し、どのような人がどのようなシーンで使うか、という「目的」を中心に据えた構成にしているのが特徴だという。

 実際の検定や、テキストの配布は、全国のパソコン教室などに設けられる「マイクロソフト認定 ICTスクール」(以下、ICTスクール)で実施される。ICTマスターの資格を持ったインストラクターが在籍しており、ICT検定のテキストなどを用いてホームユーザー向けのカリキュラムを提供する。ICTスクールはICT検定の受験会場にもなり、カリキュラムの終了時に、仕上げとして生徒がICT検定を受験する、という流れを想定している。ICTスクールで学習する費用をいくらに設定するかは、スクール運営者に任されている。ICT検定の受験料は5250円(税込み)だ。

 ICT検定開始に先駆けて、2007年6月1日からICTスクールが活動を開始する。同日に開校するのは全国25拠点で、ICT検定が始まる7月初旬には100拠点程度に拡大する見込み。目標は最初の1年で300拠点で、その翌年には1000拠点を目指すという。当初開校される25拠点には、先行して認定されたICTマスター26人が所属している。

 インストラクターについては、ICTマスターの資格が有効に働くことを期待する。一定の資格を設けることで、インストラクターの質を向上させるのが目的だ。ICT検定で最高レベルの得点を得た上で、トレーニングセンターで4日間程度の研修プログラムを受講すればICTマスターの資格が得られる。認定に必要な講習費用は各トレーニングセンターが決定することになるため公表されていないが、1日当たりおよそ1万5000~2万円程度になるとみられる。マイクロソフトがインストラクターの対象と想定しているのは、小規模パソコン教室の講師をはじめ、地域での活動にICTを利用したいNPOの関係者、シニアサークルの代表者など。パソコンリーダーとしての活躍が期待される幅広い人材を想定している。

 今回の施策でマイクロソフトが念頭に置いているのは、定年退職後のシニア層。「その人たちが、新しい日本社会を作っていける場を構築したい」と瀬戸口氏は語る。パソコンスキルを高めることで、彼らに地域のICT化を推進していく存在として活躍してほしいと考えているという。そこで、60歳以上のユーザー向けに割引価格で提供するWindows Vistaと新Office「シニア割パック」(2007年6月1日発売予定)とも連動。シニア割パックを購入後ICTスクールに持参すると、ICT検定のテキストを無償で入手できるといった特典を用意する。

マイクロソフトの発表資料