XMLコンソーシアム主催の「WebOSが造る次世代アプリケーション基盤」発表会場の様子
XMLコンソーシアム主催の「WebOSが造る次世代アプリケーション基盤」発表会場の様子
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 XMLコンソーシアムのWebサービス実証部会は2007年5月22日、「WebOSが造る次世代アプリケーション基盤」と題した調査/研究成果の発表会を開催した(公式サイト)。WebOSとは、OSのデスクトップと同じような環境をブラウザー上で実現するサービス。国内でも複数のサービスが登場しており、今後の展開が楽しみな分野の一つだ。WebOSに関するこれだけ密度の濃い発表会は「おそらく世界初」(同部会のリーダーを務める、PFUアクティブラボの松山憲和氏)とのことで、聴衆は熱心に耳を傾けていた。

 WebOSは、デスクトップ環境およびその上で動作するアプリケーションを、ブラウザー上で実行できる。必要なデータはすべてサーバー上に置かれているため、ユーザーのパソコンには基本的にブラウザーさえあればよい。このため、社内のシステム管理コストを大幅に削減できる可能性があるといわれている。

ユーザーが「OSを作る」時代へ

 ただし、これだけなら既存のシンクライアントでも同じことがいえる。WebOSが普及するには、WebOSならではのキラーアプリケーションが不可欠だ。松山氏によれば、ユーザーによるマッシュアップが可能になることが、WebOSのキラーアプリになるのではないかという。

 WebOSとはいえ、結局はインターネットの標準技術を使ったWebアプリケーションの一種。このため、既存のOS間よりもWebOS間の連携は容易だ。発表会では、オープンソースで開発されている「eyeOS」と、日本でサービスが提供されている「StartForce」、および米国で開発が進む「YouOS」の間で、データを連携させるという実験の結果も発表された。WebOSによって方法は異なるが、相手のサーバーに対して標準のコマンドを使うことで連携が可能になったという。

 将来的にAPIが標準化されれば、連携はさらに容易になる。現在、「WebOSAPI.org」という団体で標準APIを策定しようとする動きが進んでいるという。これが実現すれば、標準APIをユーザーが自由に組み合わせて、自分だけのOSを作れるようになるかもしれない。例えばAというWebOSからは操作性を、BというWebOSからはアプリケーションを…といったイメージだ。「今我々はOSに使われている立場だが、これからはOSを作る立場になれる」(松山氏)というわけだ。基幹系の業務システムのデータと、自分が作成中のデータとを連携させることなどにより、データの活用も進みそうだ。

 また、ユーザーにとっては、いつでもどこでも自分だけのデスクトップ環境を使えるようになるメリットもある。自宅のパソコン、出先の携帯電話、車内のカーナビ、街頭のキオスク端末。どれを使っても、同じ環境、同じデータにアクセスできる。例えば、ドライブで訪れる場所の情報や聴きたい曲を自宅のパソコンで用意しておき、当日カーナビから利用する、といったことが可能になる。

WebOS端末を街頭で配る

 こうした利点をうまく生かせば、WebOSは今後、ビジネスとして大きく伸びる可能性がある。ただし「ビジネスモデルの選定が、成功するかどうかの大きな要素となる」(日立システムアンドサービスの村垣委久夫氏)。

 村垣氏は、WebOSのビジネスモデルの可能性を複数提示した。まずは、WebOSやアプリケーションをパッケージ化して有償販売したり、ASPで提供したりといった方法がある。これに加え、製品やインターネット接続サービスのユーザーに対して、企業がWebOSを提供し、ユーザーを引き付けるための手段として利用することも考えられる。例えばカーナビやゲーム機。製品に付属のWebOSで付加的な情報を得られるようにしておく。あるいは、インターネット接続のプロバイダーであれば、ブラウザーが動作するだけの安価な端末と回線をセットで販売し、WebOS上でメールやオフィスソフトの機能を提供する。高速インターネット回線の接続モデムを街頭で配るがごとく、「ブラウザー端末を持って帰ってください、という方法も考えられる」(村垣氏)。

 最も有力と考えられるのは、広告主からの広告料で運用するモデル。WebOSの壁紙やアプリケーションの起動画面に広告を掲載することで収入を得る。利用者に応じて適した広告を表示させることも可能だし、人気の高いアプリケーションを開発した人には報酬を支払うなどの仕組みを入れることで、アプリケーション開発者も集められる。

 ただ、村垣氏が「残念ながら今回は、これはといえる新しいビジネスモデルを思い付くことができなかった」と話すように、有効性の高いビジネスモデルの創出は容易なことではなさそうだ。今後この部分でどんなブレークスルーが起こるのかが、WebOSの成否を左右しそうだ。