写真1 優位性を説明する米IBMのマウリSystem p担当GM
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写真2 POWER6のチップとウェハーを手にする日本IBMの渡辺執行役員
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 日本IBMは5月23日、新しいプロセサ「POWER6」と、同プロセサを搭載したサーバー製品を発表した。都内で会見に臨んだ米IBMのロス・A・マウリ ゼネラル・マネージャー(GM)は「POWER6を搭載したサーバーは性能、コスト、管理性、すべての面で他社を陵駕している。富士通とサン・マイクロシステムズの新サーバーは敗北するだろうし、ヒューレット・パッカードのサーバーが搭載するItaniumプロセサはユーザーの期待に応えていない」とぶちあげた(写真1)。

 POWERの新版は04年のPOWER5以来で3年ぶり。1つのプロセサ・チップに2つのコアを搭載したデュアルコアである(写真2)。特徴は、最大の動作周波数を従来のPOWER5に対して4.7GHzと約2倍に高めた一方で、「消費電力は同等に抑えた」(マウリGM)こと。使っていないプロセサ内部の区画の動作を停止したり、供給する電圧を制御することで実現したという。

 もう1つの特徴が、10進数浮動小数点の演算機能。演算結果の誤差が許されない、利用料金や税金など金銭の計算で多用するものだ。

 日本IBMの武藤和博システムp事業部長は「10進数の浮動小数点演算は従来、ソフトウエアによるエミュレーションで処理していたが、POWER6はプロセサのハードウエアだけで演算できる。1700クロックかかるものが、たったの8クロックで済むようになる」と説明する。アプリケーションでの効果は「2~7倍のパフォーマンス向上が確認できている」(日本IBMの中野淳システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト)。アプリケーション・ベンダーでは、独SAPがPOWER6の同機能を活用した製品を検討しているという。

 POWER6の搭載製品としてはミッドレンジの「System pモデル570」を6月に投入する。価格は最小構成で1228万380円。随時、各モデルにPOWER6を搭載していく。稼働中にサーバーのきょう体を追加して処理能力を増強できる「無停止アップグレード」に対応した。

 IBMはSystem pのシステム管理機能を段階的に強化していく。具体的には、実行中のアプリケーションをOSであるAIXの間で移動させる「ライブ・アプリケーション・モビリティー」、論理区画(LPAR)で分割したシステムをサーバー間で実行中に移動できる「ライブ・パーティション・モビリティー」に対応していく。前者は今年11月に投入する新OSの「AIX 6」、後者は今年中にPOWER6搭載機でそれぞれ利用できるようになる。

 なお、IBMは5月上旬、AIXのサポート・ポリシの変更を発表。バージョン「5.2」以降を対象に、出荷開始の時点から10年間はパッチ提供などの有償サポートをすることにした。従来は6年を基本としていた。