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 国土交通省が主導して進めているユビキタス実験「自律移動支援プロジェクト」が拡大中だ。東京・銀座での実験規模を広げ,歩道や電柱などに付与するRFIDタグ(無線ICタグ)や赤外線装置,2次元バーコードなどを増やす。年内には1万個程度にする予定という。実験の中心メンバーである東京大学の坂村健教授が,5月23日に開催されたシンポジウムで明らかにした(写真)。

 自律移動支援プロジェクトとは,床や道路,壁などに無線ICタグや赤外線センサー,2次元バーコードなどを付け,携帯情報端末で場所を識別できるようにする取り組み。音声や母国語によるガイドを提示することで,身体障害者や日本語が分からない外国人が自力で移動するのを支援することが目的だ。同じ仕組みを使って,観光案内,ショッピングやイベント情報の配信,災害時の避難誘導などにも適用できるとしている。

 銀座の実証実験の名称は「東京ユビキタス計画・銀座」。今年1月から3月に1回目の実験を実施した。今年後半には民間企業からアイデアを募集し,共同で実証実験を開始する予定。

 さらに現在,神戸空港など複数地区で実証実験を展開中(参考Webサイト:自律移動支援プロジェクト)。過去に実証実験を実施した東京・上野公園エリアでは,実サービスに移行しているという。

 坂村教授はこうした実験の意義について,「電波が届かない,耐久性が足りないなど,現場に機器やシステムを持って行って初めて分かることが数多くあった。いくつかは既に解決済みだ。今後も実験を繰り返して技術をブラッシュアップしたい」と語る。

 今後は技術面での改善のほか,メンテナンスなど運用管理の方法や,悪意ある者がシステムに損害を与えた場合のペナルティをどうするかといった,制度面の検証も進める。「実証実験を繰り返しながら,日本から世界に提供できる新しいインフラ像を確立したい」(坂村教授)。