総務省は5月22日,情報通信審議会電気通信事業部会接続委員会を開催した。意見聴取の場でNTT東西は,いったんは同社が負担することになった固定電話の費用の一部を,以前のように設備を利用する事業者から徴収したいと要求した。

 同委員会では2008年度以降,固定電話設備を利用する事業者がその費用を負担するための接続料について議論している。今回はNTT東西地域会社,KDDI,ソフトバンク,フュージョン・コミュニケーションズ,九州通信ネットワーク,ウィルコムの7社から意見を聴取した。各社の主張で焦点となったのは,今後のNTS(non traffic sensitive)コストの扱い。

 NTSコストとは,電話サービスの運営に必要な経費のうち,電話の通話量に依存しない固定部分のコストのこと。以前は接続料として徴収していたが,NTT東西の基本料として付け替えることになった。移行措置として,2005年度から段階的に控除額を増やしていき,5年後の2009年度に全額控除することになっている。いまのところ基本料を値上げしていないので,NTT東西が負担している。

 それがユニバーサルサービス制度の算定規則の見直しに伴い,NTSコストの扱いを見直す可能性が出てきた。このNTSコストを接続料から控除する点は変わらないが,ユニバーサルサービス制度のユーザー負担を軽減する目的から,NTSコストの控除の移行期間を6年などに引き伸ばす案が浮上している(関連記事)。NTT東西にとっては,ユニバーサルサービス制度による補てんは減るが,段階的な控除の期間を引き延ばすことでコスト負担が一時的に軽くなる。

 このような状況のなか,NTT東西は移行期間の延長について言及せず,NTSコストの一部を接続料による徴収に戻すことを要求した。その一部とは,き線点RT(remote terminal)とGC(加入者交換局)間の中継伝送路コスト。「他社の直収電話はRTと交換機間の伝送路コストを接続料として他事業者から回収する。しかし,我々(NTT東西)は同様な伝送路コストを基本料に付け替えることとされている。公平性に欠ける」(NTT東日本)という主張だ。

 NTT東日本によると,このコストは約3000億円のNTSコストのうち900億円を占めているという。ただ,こうした違いが出るのは,利用している設備の機能の違い(集線の有無)によるもの。委員会の構成員(大学教授など有識者で構成)からは「設備(RT)を(NTSコストの対象とならないものに)変更すればよいのではないか」とする意見が出た。

 一方,他事業者は「ユニバーサルサービス制度の見直しによる補てん額の減少は,接続料算定方法の見直しでカバーすべきではない」(KDDI),「NTSコストは本来,接続料原価に含めるべきではないコストであり,即座に控除すべき。控除期間を長期間に変更することは適当ではない」(ソフトバンク)など,控除の移行期間の延長に反対する意見が中心だった。各社の意見を踏まえ,次回から具体的な議論に入る。