ジュピターテレコム(J:COM)は5月22日,番組事業統括会社であるジュピターTV(JTV)が分割して新設する新ジュピターTV(仮称)と9月1日付で合併すると発表した。J:COMはこれまでにCATV会社のM&A(企業の合併・買収)による合従連衡戦略を進めてきたが,新ジュピターTVとの合併によってコンテンツにまで事業領域を拡大する。

 JTVは,7月2日をめどに『16の専門チャンネルへ出資・運営する新ジュピターTV』と『ショッピング専門の「ショップチャンネル」と有線役務利用放送事業会社「オンラインティーヴィ」を中心事業として展開するSC メディアコム』に分割する予定である。これを経て,J:COMが9月1日付で新ジュピターTVを吸収合併する。合併比率は,J:COMが1に対して新ジュピターTVが1.40665。新ジュピターTVの2007年度通期の営業収益予想は133億円,営業利益は19億円の見通しだ。

写真●新ジュピターTVの吸収合併について説明するジュピターテレコムの森泉知行社長兼CEO
写真●新ジュピターTVの吸収合併について説明するジュピターテレコムの森泉知行社長兼CEO
 新ジュピターTVを吸収合併する狙いについて,J:COMの森泉知行社長兼CEO(最高経営責任者,写真)は「当社はCATVのM&Aによって規模を拡大し水平統合を進めてきたが,今回は垂直統合だ。水平統合に垂直統合を加えることで,業界のリーディング・カンパニーとしての地位をさらに強固なものとし、多チャンネル市場の活性化に主導的な役割を果たす」と説明する。

 新ジュピターTVは,洋画チャンネル「ムービープラス」などを手がけるジュピターエンタテインメントやゴルフ専門チャンネル「ゴルフネットワーク」を提供するジュピターゴルフネットワークなどを連結子会社に抱える。また,持分方適用子会社としてスポーツ専門チャンネル「J SPORTS」を提供するジェイ・スポーツ・ブロードキャスティングなどもある。J:COMは,これらの有力専門チャンネルを吸収合併によって一気に傘下に収める。森泉社長は,「これだけのチャンネルをいちから作り上げるのは,700億円あっても無理だ。時間がかかるし,時間をかけたとしても視聴世帯数を獲得するのは無理だろう」と語る。

 J:COMは,チャンネルの再編成にも着手する方針だ。森泉社長は「同じようなジャンルで競合するチャンネルがあるので,同じジャンルのなかで合従連衡を進めて強化する」とコメント。また,J SPORTSには「役員として参画したい」との意向で,番組内容の強化に積極的にかわっていくとの考えを示した。

「スカパー!やNTTの対抗軸との考えはない」

 森泉社長は,新ジュピターTVの吸収合併による番組事業への展開について,IP放送の本格化によって通信・放送業界の競争が激化するとし,それに対する競争力強化を掲げる。その一方で,まずは有料多チャンネル放送のマーケットを拡大することを第一の目的だとしている。「NTTとスカパー!の対抗軸という気持ちはまったくない。お互いにパイを取り合うほどこの有料多チャンネル放送の市場は大きくない」と,森泉社長は言う。

 J:COMによると,日本の有料多チャンネル放送の普及率はせいぜい20%程度だという。伸び悩む有料多チャンネル放送の市場を拡大させるために,「組めるところは組み,増えた分をどちらかがもらうことになる」(森泉社長)という考えだ。実際に,J:COMはスカイパーフェクト・コミュニケーションズと協力関係を模索しているという。「一般客が参加できるコンテンツ・フェアを実施するなどマーケットを健全に育てるために協力できるのではないか」と森泉社長は話した。

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