愛媛県愛南(あいなん)町は5月18日、同月14日に漏洩が発覚した個人情報の件数が14万件に上ると発表した。住所、氏名、生年月日、性別といった住民の基本4情報のほか、口座情報や住民票コードも流出している。総務省によれば、「住民票コードがここまで大量に流出したのは初めて」という。さらに愛南町の情報漏洩を起こしたパソコンから、山口市と長崎県対馬市の個人情報が漏洩していることも分かった。

 流出元のパソコンは、山口電子計算センター(以下、YCC)北九州事業所に勤めていた元女性従業員の私物。この女性職員は自宅に個人情報を持ち帰って、パソコンにコピーしていた。ファイル交換ソフト「Winny」を利用するなかで、主にデスクトップのファイルをWinnyネットワークに流出させるウイルス「アンチニー」に感染した。

 YCCは従業員9人のITベンダー。愛南町の合併に伴うデータ移行作業を請け負ったデンケン(愛媛県宇和島市)は2003年に、同業務をYCCに再委託した。ただし愛南町は「再委託を許可していない」(総務課)という。対馬市でも、YCCは再委託先になっている。対馬市はITベンダーのBCC(福岡市)にデータ統合作業を依頼。BCCがYCCに再委託した。BCCは「対馬市に提出した体制図はYCCを含んたもので、再委託は対馬市の了解を得ている」としている。山口市の場合は、合併によるデータ統合をYCCに直接発注していた。

 最も情報漏洩規模の大きかった愛南町では、5万4850人分、14万2843件のデータが流出した。約3年前のデータだが、当時の全住民の情報を含む。漏洩した情報は、住所、氏名、生年月日、性別、転入転出の履歴、住民票コード、選挙資格(資格の有無、登録日、抹消日)、一部の公営住宅入居者の口座情報、国民年金(基礎年金番号、加入種別、取得日、喪失日、納付記録など)、老人保健(受給者番号、取得日、喪失日、被保険者保険情報など)である。

 愛南町は5月21日から、情報流出を確認できた世帯を全職員で訪問。説明とお詫びを実施していく。住民票コードの変更を求める住民には再申請を依頼するという。愛南町には17日までに、住民から25件の問い合わせが寄せられている。

 山口市は、住民税や所得額、軽自動車の登録日、税金を引き落とす口座の名義人名、住所を含む住民記録など、合計7万7562件の情報漏洩を確認している。山口市総務課は、「口座情報以外で個人を特定できる情報はない」と話す、住民記録情報は合併した旧秋穂町の、03年と04年における全住民分とみられる。16日から市役所に設置した専用窓口には2日間で140件の問い合わせがあったという。同市は16日、旧秋穂町の住民全員にお詫び状を発送している。

 対馬市は、公営住宅家賃システムのデータが流出した。現在詳細を調査中で、21日にも調査結果を公表するとしている。現時点では、「住所・氏名など1132人の個人情報が流出していることを確認している」(対馬市秘書課)という。