Microsoftの「Windows Hardware Engineering Conference(WinHEC)2007」が開幕してから2日経過し,一つ明確になったことがある。米Microsoftは先ごろ発売した「Windows Vista」の成功を拡大したいだけで,ほかのことに取り組む意志などないのだ。これまでのWinHECでMicrosoftは,未来の技術を強く打ち出してきた。ところが今年のWinHECは,Windows Vistaの一般向け発売後という時期的な理由もあって,過去にばかりこだわっている。

 Windowsクライアント・パートナ・グループ担当ディレクタのDave Wascha氏は,WinHEC 2007の場で筆者に「WinHECでは,かつてWindowsのメジャー・アップデートをここまで詳しく取り上げたことなどなかった」と話した。「ほとんどの人にとって,Windows Vistaは未来なのだ」(Wascha氏)。

 Microsoftは,特に技術志向ブロガーたちのあいだで「Windows Vistaは出だしでつまずいている」という認識が広がりつつあるにもかかわらず,様々な事実と数字を挙げて,Windows Vistaの大成功が間違いないことをしつこく示した。すでに伝えた通り,Microsoft会長のBill Gates氏は5月14日,「1月に発売したWindows Vistaが累計4000万本売れた」と発表した(関連記事:【WinHEC 2007】発売100日でVistaを4000万本販売,Longhornの正式名称は「Windows Server 2008」)。この販売数は,同期間のパソコン販売数を考えると当たり前だ。ところが,いまだにこの数字とMicrosoftの正直さを疑う人は多い。

 Microsoft副社長のMike Nash氏は5月16日の基調講演で30分を費やし,Windows Vistaと以前のWindowsについて互換性の点から語った(関連記事:【WinHEC 2007】「Vista対応機器はXPより速いペースで増えている」 --- Windows Product Management担当副社長)。それによると,発売時点の対応ドライバ数は,「Windows 2000」が350種類,「Windows XP」が1万2000種類だったのに対し,Windows Vistaで3万3000種類に大きく増えたという。Windows Vista対応ハードウエアの種類も大幅に増えており,2006年11月の企業向け発売時が150万台,2007年1月に一般向け発売時が170万台で,現在は190万台ある(関連記事:「Windows Vista」は発売から100日でどの程度成功したのか)。

 さらに,消費者向けアプリケーションのトップ50中48本がWindows Vista対応となっており,消費者向けセキュリティ・ソフトウエアのトップ5はすべてWindows Vistaに対応した。したがって,結論ははっきりしている。オンライン・コミュニティでいろいろと書かれているかもしれないが,Windows Vistaのハードウエアおよびソフトウエアに対する互換性は,以前のWindowsと比べものにならないほど高いのだ。この件の詳細については,SuperSite for Windowsに掲載した筆者の記事「Hot or Not」(英文)を読んでいただきたい。

 WinHEC 2007のサーバー関連セッションは,次期Windows Server「Windows Server 2008」が2007年遅くまでリリースされないにしても,少しだけ未来を見ていた。Microsoftは「Windows Server 2008に搭載する『Hypervisor』ベースの仮想化技術を,機能制限版としてWindows Server 2008完成から180日以内にリリースする」とした(関連記事:Microsoft,07年下半期リリースの仮想化環境「Viridian」ベータ版は機能を制限)。その先には,新たな中小企業向けストレージ・サーバー製品を2008年に出す計画がある(関連記事:【WinHEC 2007】MicrosoftがWindows Server 2008以降のサーバーOSのロードマップを発表)。現在「Windows Server 2008 R2」と呼ばれているWindows Serverの次期中間リリースは,2009年になる方向だ。Microsoftジェネラル・マネージャのBill Laing氏は5月15日の基調講演で「一定間隔のリリース」と述べた。

 ところで,Microsoft技術フェローのMark Russinovich氏が5月15日に行った基調講演は,Windows Serverカーネル内部をテーマとしており,驚くほどユーモラスで魅力的だった。Russinovich氏は卓越した話し手であり,彼よりもWindows内部に詳しい人物など存在するはずがない。そんなRussinovich氏が,基調講演で多くの高度な技術的問題を包み隠さず話したのだ(関連記事:【WinHEC 2007】「Windows Internals」の著者が語るWindows Server 2008の強化点)。困ったことに,筆者の出席したWinHEC 2007の講演でこれが一番だった。