写真 ロシア カスペルスキー研究所のユージン・カスペルスキー所長
写真 ロシア カスペルスキー研究所のユージン・カスペルスキー所長
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 ロシアのウイルス対策ソフトベンダー,カスペルスキー研究所の設立者で所長のユージン・カスペルスキー氏は5月15日,都内で会見を開きウイルスの動向を紹介した。

 同氏は,2000年以降,ウイルス作者のウイルス作成の動機が,いたずらから金もうけに移っているを指摘。「ウイルス作成に手に染める犯罪者は増加しており,今後この傾向はさらに強まる」とした。

 現在懸念している問題として同氏が挙げたのは二つ。一つはファイルを人質に取るウイルスの登場である。感染するとディスク上にあるファイルを暗号化し,「300ドル払えば暗号を解く鍵を教える」と脅すものだ。「これまで登場したこうしたウイルスは暗号の実装が稚拙で,暗号化されても,鍵なしで復号するツールを作れた。しかし,今後ウイルス作者が暗号の実装方法を学び,鍵がないと復号できない状況になってしまうと大変だ」と言う。

 もう一つの懸念はウイルス対策ソフトの裏をかくウイルスの増大である。ウイルス対策ソフトのパターン・ファイルの更新をブロックするほか,大量の亜種を作り出してウイルス対策ベンダーのパターン・ファイル作成を妨害したり,ウイルスの動作を隠ぺいするルートキットを埋め込んだりする。

 こうした問題に対しては「特効薬はない」としながらも,「技術的,社会的にまだまだやるべきことはある」とした。技術面では,ウイルスの検知精度を上げる技術の開発のほか,Windows Vistaなどセキュリティを考慮した新しいOSの導入を挙げた。社会的な面では,「警察などの国内法執行機関とセキュリティ・ベンダーの密接な協力や国際法執行機関間の連携の強化,ユーザーへのセキュリティ啓蒙活動が重要」と語った。