経営情報学会戦略的IT投資マネジメント研究部会の講演会で話す武蔵大学の松島桂樹教授
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 経営情報学会(戦略的IT投資マネジメント研究部会)は4月28日、東京都内で「IT投資マネジメントの発展」をテーマにした講演会を開催した。同部会には、研究者や情報システム部門の実務家ら約90人が参加している。IT投資マネジメントに関する最新の研究成果をまとめた『IT投資マネジメントの発展―IT投資効果の最大化を目指して―』(白桃書房)の出版を機に、研究成果を発表する機会を設けた。

 同書の編著者でもある武蔵大学の松島桂樹教授は、講演のなかで、「IT投資について、日本企業は米国企業に後れをとっているといわれることがある。確かに日本企業のIT投資の絶対額は米国企業に比べて少ないが、費用対効果という面では、日本企業のほうが優れている。日本企業のほうがIT費用に敏感で、ITはあくまで事業目的を達成するための道具だと割り切って投資している」と話した。

 「従来は、『売上高比率○%というIT費用予算枠を設定する考え方は古い』という議論もあったが、一定の予算枠のなかで最大限の効果を出すために、継続的な改善活動を進めるのは日本企業に特徴的な考え方。予算を守りつつ効果を増大させる努力が費用対効果の最大化につながっている」とも主張した。

 具体的なIT投資マネジメントの手法としては、「無理に人件費削減や在庫削減などの効果を金額換算するのではなく、経営者・利用部門・情報システム部門の3者で業績目標について約束して合意形成するアプローチが有効だ」と話した。

 このほか、「IT投資評価とバランス・スコアカード(BSC)」「IT投資マネジメントにおけるインタンジブルズ(無形資産)の管理」「日本の先進企業におけるITマネジメント事例」についての講演が行われた。