米Microsoftは2005年に開催されたMIXカンファレンスで,Bill Gates氏の基調講演を「Internet Explorer(IE)7.0」発表の場として選び,2006年にリリースした。しかし2007年のMIX07では,Microsoftが開発中であると認めたIEの次版について,ニュースはなかった。

 MicrosoftはMIX07で,IEの次版ではなく,クロスプラットフォームのWebブラウザ向け新プラグイン「Silverlight」ばかり取り上げた。Silverlightは,これから数カ月かけて,興味深い新たな開発者向け機能で一気に強化していく予定だ(関連記事:Microsoft,Flash対抗のメディア再生技術「Silverlight」を発表)。IE 8.0はどうなっているのだろうか。

 MicrosoftのIEプラットフォーム・アーキテクトであるChris Wilson氏はMIX07において,「次期IEの開発がやや遅れている」とほのめかした。かつてMicrosoftは,「IE 6.0からIE 7.0へのバージョン・アップが5年もかかったのに対し,大きく状況を改善して,IE 7.0出荷から12~18カ月後にはIE 8.0をリリースする」としていた。ところがWilson氏はMIX07で,「IE 8.0のリリース時期は,2006年10月に出荷したIE 7.0から2年後近くになりそう」と述べた。

 またMicrosoftは,IE 8.0にどのような機能を搭載するかについても,お茶を濁している。著者が入手した情報によると,MicrosoftはSilverlightの影を薄くさせたくないがために,MIX07で極端にIE 8.0の話題を避けていたそうだ。以前は,「IE 8.0で,CSS標準と各種Web技術に対する互換性向上に取り組んでいく」としていた。

 問題は,IE 6.0とIE 7.0に5年もの停滞があったため,いまだWeb開発コミュニティが多少神経質になっていることだ。その間に米Mozillaと米Appleの競合Webブラウザは,多くの新機能を搭載し,市場シェアを拡大した。様々な点でIE 7.0は,まさにMicrosoftが機能面で追い付くチャンスである。また,IEのWebブラウザ市場におけるシェアは現在も圧倒的だが,Web開発者は,自分たちのWebサイトとアプリケーションをMozilla Firefoxでも確実に動かすよう求められる場面が増えてきた。そこでWeb開発コミュニティは将来に備え,次期IEの仕様についての簡単なガイダンスをMicrosoftに要求している。

 Web開発コミュニティの要求は妥当で,Microsoftができるだけ迅速に対応しなければならない問題である。実際に,Microsoftが毎年開催するWebカンファレンスで対処してきた種類の問題だろう。