写真1 ICタグを張り付けたこん包用の箱
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写真2 作業員が身につけたICタグ
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写真3 オフィスの出入り口近くに設置したゲート型アンテナ
写真3 オフィスの出入り口近くに設置したゲート型アンテナ
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写真4 コントロール・センターの様子
写真4 コントロール・センターの様子
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写真5 作業の予定時刻と進捗状況をグラフ化するアプリケーション画面
写真5 作業の予定時刻と進捗状況をグラフ化するアプリケーション画面
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 日本通運とネットワーク機器ベンダーのシスコは5月4日、オフィスの移転作業に無線ICタグを活用する実験を共同で行った。ICタグとゲート型のアンテナでオフィスの移転の荷物を管理する事例は国内初である(関連記事)。ICタグは、UHF帯を利用するGen 2対応製品で約600枚を利用した。

 新宿三井ビル(東京都新宿区)から東京ミッドタウン(東京都港区)へオフィスを移転するシスコが、実証実験の場を提供。ICタグを業務に生かすノウハウを蓄積する実証実験の場を求めていた日通と、ネットワーク・ソリューションの一つとして無線ICタグ関連製品の売り込みを強化したいシスコの思惑が一致して実現した。

 移転自体は全社規模だが、実験の対象としたのは、新宿三井ビル内の8階にオフィスを構えていたシスコの「アライアンス&テクノロジーラボ(以下、A&Tラボ)」の移転作業。ラボ内のIT機器をこん包用の箱に1~数個詰め、箱の表面に「箱を識別するタグ」と箱の中に入れた「機器を識別するタグ」をあらかじめ張り付けておく(写真1)。

 対象の荷物の総数は、383個。その内、229個の荷物にICタグを張って移転作業を追跡した。ただし、箱に入りきらない大型のIT機器は、エアーキャップで包装してその上からICタグを張りつけた。

 引っ越しの作業員も衣服にICタグを身につけている(写真2)。作業員が段ボール箱をカートに乗せ、部屋の入り口近くに設置したゲート型アンテナ(写真3)を通過すると、「いつ」「誰が」「どのIT機器」を運んだかがリアルタイムに把握できる仕組みだ。ゲート型アンテナは、新宿三井ビルと東京ミッドタウンの2カ所に設置。荷物の搬出時間と搬入時間を記録する。

 進捗状況は、東京ミッドタウン内に設置したコントロール・センターの画面にリアルタイムに表示(写真4)。新たに開発したアプリケーション画面には、搬出(搬入)の予定時間が青い棒グラフで、ICタグで検知した搬出(搬入)時間が赤い折れ線グラフで重ねて表示された(写真5)。

 今回の実験では、あらかじめ取り決めておいた荷物の搬出(搬入)の予定時刻と、ICタグで検知した搬出(搬入)時刻を比較することで、作業員の人数の見積もりや作業計画が妥当だったかを評価した。

 グラフを見ると、作業を開始した11時から12時までの間は、予定を25%ほど上回るペースで荷物の搬入が行われたことが分かる。一方、12時を過ぎたあたりで搬入のペースが落ちた。予定を下まわったのは、「東京ミッドタウン周辺の道路が想定していた以上に混雑したことと、ビルに到着した荷物を運ぶカートの数が足りなくなったため」(日本通運 秋葉原支店 移転・引越事業所 物流技術管理士 赤木和司氏)だ。

 一方、荷物を搬出する新宿三井ビル側では、すべての荷物の搬出が済んだ時点で搬出率が99.1%を示し、0.9%のタグが認識できなかった。「うまくタグを読み取れなかったか、タグ自体が故障していたのどちらかと考えられる」(シスコ アライアンス&テクノロジー アライアンス推進本部 森永浩之担当課長)。日通とシスコの共同実験は今回が第一弾。「今後も同様の実験を繰り返し、できるだけ早い時期にサービス化にこぎつけたい」(日本通運 引越営業部長の斉藤寛人氏)という。