4月27日に開催された保護利用小委
4月27日に開催された保護利用小委
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 文化庁長官の諮問機関で著作権の保護期間の延長問題を取り扱う、文化審議会 著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(保護利用小委)の第2回会合が、2007年4月27日に開催された。今回は著作権との関連性の高い関係者からのヒヤリングを実施。各分野の権利者や放送事業者、アーカイブ運営団体の各代表者、一般消費者の立場を代表するジャーナリストなど、15人が意見を陳述した。

 保護利用小委の最大の議題として注目されている、保護期間を現行の死後50年から死後70年に延長することの是非をめぐっては、権利者団体などから賛成の意見が相次いだ。「保護期間を欧米と整合させることが国産コンテンツの流通促進につながる」「創作者の創作意欲の増進につながる」「平均寿命の伸長を考慮すべき」「計画中の著作者データベースが完成すれば、コンテンツの二次利用申請の負荷を軽減できるため、保護期間を延長しても流通阻害は起きない」「利便性ばかりで議論を進めるのでなく、創作行為への敬意も考えてほしい」といった意見が聞かれた。これに対し、利用者側の団体関係者からは「死後50年を70年に延長しても創作意欲の増進にはつながらない」「保護期間を延長することで過去の著作物の利用が妨げられ、文化の発展に逆行する」「感情論で保護期間延長問題を議論しても意味がない」といった意見が出た。

 日本書籍出版協会やネットワーク音楽著作権連絡協議会(NMRC)など、創作者と利用者間に立つ流通関連の団体関係者からは、「会員企業の間でも賛否が分かれている」との報告があった。また権利者側でも、「テレビ番組をめぐっては、将来的に保護期間をめぐる問題が起こることもあり得るが、現時点では(50年でも)問題はない」(日本脚本家連盟)との声も出た。

 このほか、「没年不詳の著作者の著作物も、例えば生後150年で保護を終えるなどの規定を新設してほしい」(青空文庫)、「創作意欲の増進を目的に保護期間を延長するなら、過去の著作物に遡及適用せず、対象を将来創作される著作物に限定すべき」(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)、「実演家と著作者はいずれも創作活動を行っているが、保護期間は前者が実演後50年、後者が死後50年。実演家は存命中に保護期間が切れる場合もある。実演家も没年起算にしてほしい」(実演家著作隣接権センター)といった意見が聞かれた。

 保護期間以外の議題については、「裁定制度の対象を著作隣接権者にも拡大してほしい」(日本放送協会、日本民間放送連盟)、「現行の裁定制度は申請料金が高額であるため、制度として存在していても実際には利用が困難」(日本書籍出版協会、NMRC)、「従来のマイクロフィルムによるアーカイブ作成と同様、デジタルデータによるアーカイブ作成についても、複製と図書館内での利用を法的に保障してほしい」(国立国会図書館)、「保護期間の終了時期を明確にするため、著作者の没年データベースを整備してほしい」(青空文庫)といった提案が出された。

 保護利用小委では、5月16日に開催予定の次回会合でも引き続き関係者からのヒヤリングを実施する予定。