写真 モバイルビジネス研究会の第6回会合の様子
写真 モバイルビジネス研究会の第6回会合の様子
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 総務省は4月26日,販売奨励金(インセンティブ)やSIMロックの是非,MVNO(仮想移動体通信事業者)の促進策など,これからの携帯電話のビジネスモデルを議論する「モバイルビジネス研究会」の第6回会合を開催した(写真)。

 前半は,野村総合研究所の北俊一構成員により,「諸外国における携帯電話販売の現状と我が国への示唆」と題するプレゼンテーションが行われた。北構成員によると,欧米でインセンティブの規制があるのはフィンランドだけだという。(1)フィンランドはこれまでインセンティブを禁止する政策を採ってきたが,2005年6月に第3世代携帯電話(3G)に限り,普及を促進させる目的で規制を解除した,(2)アジアでは韓国もインセンティブが規制の対象となっていたが,2007年3月に公表した「通信規制緩和ロードマップ」の中で,2008年3月からインセンティブを完全に自由化する方針を打ち出した──などという海外におけるインセンティブの規制状況を披露した。

 続いて,英国やフランス,ドイツ,イタリア,米国といった欧米の販売状況について説明した。欧米では,期間拘束型の販売モデルが主流となっており,ユーザーが1年間や2年間継続して利用することを前提に,高額な料金プランを契約すれば端末を安く買うことができる。ただし,途中で解約した場合は残りの期間の基本料金または違約金が徴収されるのだという。「例えば英国は,1年または1年半の継続利用を前提に月額25ポンド以上の料金プランを契約したユーザーは端末を無料で入手できる(一部の高機能な新機種を除く)。その代わり,途中で解約したユーザーは残存期間の合計料金が徴収される」(北構成員)。

 一方,SIMロックは拘束期間内の解除は有料だが,拘束期間後であれば無料で解除できる国が多いという。契約期間を拘束した上に,端末価格と料金プランがひも付いているので,携帯電話事業者は端末インセンティブをある程度回収できるのだ。事業者にとってSIMロックの必要性は低いという。他方,「他社との差別化を図る目的で事業者独自のプラットフォーム・サービスを採用する動きが加速している。日本と同様,SIMロックを解除しても一部機能は使えないという状況になりつつある」(北構成員)。

 期間拘束型の販売モデルは,「端末インセンティブをユーザー自身が支払う」という点でインセンティブの問題を緩和するための有効手段に見える。しかし,「不公平感は是正できても(契約期間の拘束により)ユーザーの自由度が失われる。結局,公平性と自由度のバランスをどう考えるかが重要になる」(北構成員)。さらに「全体的な印象として,欧米は日本型に近づいている印象を受けた。日本の携帯電話のビジネスモデルが次にどこへ向かうべきかという点で欧米は参考にならない。日本発のモデルを考える必要がある」と総括した。

 後半は,事務局(総務省)が主要論点の一次案を提示した。内容は基本的に第5回までの議論をまとめたもの。例えばインセンティブに関しては,「インセンティブの水準を直接規制する方策を講じた場合,端末需要の減少などマイナス効果をもたらす可能性があるのではないか」「契約期間の拘束は一定の期待収益やコスト減が見込まれるなどの合理的理由があれば電気通信事業法の『不等な差別的取り扱い』には該当しないのではないか」「インセンティブ以外にも端末の営業経費が通信料金の原価に含まれているかどうかの検証が必要ではないか」といった論点が列挙された。

 また今後検討する施策は,直ちに取り組むべき措置(第1フェーズ)と2011年時点で実現すべき措置(第2フェーズ)の二つに分け,第1フェーズから第2フェーズへと段階的に移行していくアプローチを提案した。2011年という数字は,第4世代携帯電話(4G)などによる高速通信の実現,固定網におけるIP化の進展,放送デジタル化の完了といった点を踏まえたものである。

 その後の自由討論では,「各社のインセンティブの会計上の扱いを調べるべき」「SIMロックを解除しても接続できない理由を具体的に列挙すべき」「端末を頻繁に買い替えるユーザーは高いARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)を払っていることが多く,必ずしも得しているとは限らない。低いARPUのユーザーが高いARPUのユーザーにぶら下がっているのが現状で,本当は誰が不公平なのかをもう少し詳しく調べる必要がある」「端末プラットフォームの標準化やオープン化をもっと検討すべき」といった意見が出た。

 次回の会合は5月31日。今回に続き,主要論点について議論する。