壇上に立つジェイ・ジェイミソンWindows本部長
壇上に立つジェイ・ジェイミソンWindows本部長
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Vista発売後も、パソコン出荷台数には大きな変化はなし
Vista発売後も、パソコン出荷台数には大きな変化はなし
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プレミアム製品の売れ行きが好調
プレミアム製品の売れ行きが好調
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ジーエフケー マーケティングサービス ジャパンの岩渕氏が分析結果とパソコン業界への提言を披露
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Vista発売後のパソコン販売台数。2月に前年比100%越えを記録したものの、3月には低下した
Vista発売後のパソコン販売台数。2月に前年比100%越えを記録したものの、3月には低下した
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増設メモリーの売れ行きが好調
増設メモリーの売れ行きが好調
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 マイクロソフトは2007年4月23日、Windows Vistaの販売に関する総括と、今後の施策に関する記者発表会を開催した。登壇したWindows本部のジェイ・ジェイミソン本部長は「パソコンの売り上げに与えた影響は期待したほど高くなかった」と認めながらも、技術に興味の強い先進ユーザー層には十分に訴求できたこと、パートナー各社との協調により市場を発展させていく仕組み(エコシステム)が確立できていることなどを挙げ、中長期的な見通しは明るいと述べた。

 Vistaの発売後も、パソコンの出荷台数は前年と比較して大きな伸びは見せていない(関連記事)。ジェイミソン氏は「Vistaの発売によって少し売り上げは上がったが、時間が経過するにつれ下がってきた。今は多くの人がパソコンを持っている時代なので、これは当然の結果だろう」と見る。だが先進ユーザーには好評を博しており、この動きが今後一般ユーザーにも波及することが期待できるという。ジェイミソン氏は「売り上げは期待を下回るが、私は強気だ」と幾度も繰り返した。

 強気の理由は大きく3つ。まず、パートナーとのエコシステムの存在がある。Vistaの発売によって対応製品の開発が進んでおり、日本だけで、2007年度に2兆円の経済効果があるとの調査結果も出ているという。Vistaの売り上げ100円当たり、他のハードウエア、ソフトウエア、サービスでは2022円もの売り上げがあるとのデータもあり、業界全体で市場を盛り上げられる可能性があると見る。

 2つ目は、ユーザーが積極的にプレミアム製品を選んでいることだという。プレミアム製品とは、VistaのエディションのうちUltimate、Business、Home Premiumを指す。2007年3月時点では、旧バージョンや他社製品も含めた店頭でのOSのシェアのうち、40%以上がプレミアム製品。またプリインストールパソコンにおけるプレミアム製品の搭載率は70%以上に上る。さらにパソコンのパーツにバンドルされるDSP版やパッケージ版では、90%ものユーザーがプレミアム製品を選択している。こうした数字を次々に紹介しながら、「これはとても大切なことだ。顧客がメールやWebだけでなく、パソコンでもっといろいろなことをしたいと考えている証拠だ」(ジェイミソン氏)とし、写真や動画の管理など、生活に密着したパソコンの使い方が伸びていく可能性を示唆した。

 3つ目は、互換性の高さ。日本市場では約2300種類のアプリケーション、約5400種類の周辺機器がVistaに対応している。これは、Windows XP発売後の同時期と比較すると約150%になるという。ただ主要製品で未対応のものもあり、代表格が米アップルの「iPod」と「iTunes」。これについては「アップルとマイクロソフトが協力して作業を進めており、iTunesを間違いなくVista上で正式にサポートする方向に進んでいる。間もなくアップルから公式な発表があるだろう」(ジェイミソン氏)と明言した。

 一般消費者向けだけでなく、企業向けでも今後大きな発展が見込めるという。過去の例からも、企業向けに導入が始まるのは発売後6カ月目になりそうだが、既に良い兆候が見え始めている、と具体的な数字を公表。例えば従業員1000人以上の大企業において、2007年中に16万台ものVistaパソコンの導入予定があるという。

 今後、新たな施策も展開する。例えば、最上位エディション「Ultimate」にのみ用意される特典機能「Ultimate Extras」のうち、動く壁紙として話題になった「DreamScene」の日本語版が間もなく登場する。店頭でのガイドブック配布、ロゴ製品購入者を対象にしたキャンペーンなども継続する。

デジタル機器のリッチコンテンツ化を生かす

 発表会の途中では、ジーエフケー マーケティングサービス ジャパンのグローバルアナリシス部 シニアアナリストの岩渕真貴氏が登壇。調査会社の立場から、Vistaの販売動向について分析した。

 2007年に入ってからのパソコン売り上げの前年比は、1月が93%、2月は107%、3月は97%だった。2月は、1年ぶりの100%越え。3月は例年なら企業需要が見込める時期だが、企業ユーザーがVista導入に慎重だったことから苦戦した、と岩渕氏は分析。また増設メモリーが好調なこと、パソコンの平均単価が上がっていることなどを挙げ、「ジーエフケーとしては、Vistaの発売によって効果があったととらえている」(岩渕氏)と分析した。

 ただ、本当の効果が明らかになるのはこれからだという。岩渕氏が強調したのは、「すべての家電が接続可能になっている状況を、パソコンがいかに生かしていけるか」に命運がかかっているということだ。薄型テレビやデジタルカメラなどのデジタル機器は高画質化を続けており、ユーザーの購入意欲も高い。DLNAやHDMIなどの普及により、接続性も向上している。一見パソコンと競合するように思える動きだが、「これはパソコンにとってネガティブなことではない。長期的に見れば、パソコンの潜在需要だ」(岩渕氏)。こうした動きを追い風にして、パソコンがいかに存在感を増すかが今後の課題となるという。