欧州連合(EU)の独占禁止法(独禁法)担当委員トップであるNeelie Kroes氏は,米国の独禁法関係者の前で,「米Microsoftが2004年の独禁法違反判決に従わない状態を変えないため,欧州の独禁法当局はもっと厳しい対応の実施を検討し始めた」と述べた。この発言は,米国を訪れたKroes氏が,米法曹協会の公開討論会で行ったものだ。

 Kroes氏はMicrosoftに言及し,「(EUの独禁法当局である)欧州委員会(EC)の決定に従うことを拒否した企業は,これまで1社もなかった」と話した。「もっと効果的な対策の検討が必要ではないかと悟った。われわれは,間違いなく今後も責任を全うする」(Kroes氏)。

 ECは2004年3月に,様々な独禁法違反行為があったとして,Microsoftに有罪判決を下した。それ以来,Microsoftは何度も締め切りに遅れながらはっきりしない態度を取り続け,いまだに和解条件の対応を完全には終えていない。EUは2006年に条件不履行を理由としてMicrosoftへの制裁金を科しており,「近い将来,もう一度制裁金を科す可能性がある」と警告したわけだ。

 Microsoftによると,EUの要求に応えようとしてきたという。「残念ながら極めて不明確で曖昧な定義の(ECによる)決定に従うために,人間の力で実行可能なことはすべて行ってきた。今後もできる限りの対応をとり,ECとの共同作業を続ける」(Microsoftの出した声明)。

 ここでMicrosoftを弁護しておこう。確かにMicrosoftは,ぎりぎり合法的な方法でことあるごとに対応を遅らせてきた。ただしEUは,要求の多くで具体的な命令をほとんど出さなかった。判決で求められた和解条件のうち,最後に1つ残った項目がサーバー関連文書の提出である。EUは,これまでMicrosoftが提出した文書を何度も「不完全で使い物にならない」とした。この文書の閲覧ライセンスを取得すると,Microsoftのワークグループ・サーバー技術と連携する製品やサービスを容易に開発できるようになる。さらにEUは,Microsoftが設定した文書閲覧ライセンス料に対しても異議を唱えている(関連記事:EU,ライバルに対する技術情報の無償提供をMicrosoftに要求)。