写真1 KPMGビジネスアシュアランスの 田口篤 執行役員・ディレクター
写真1 KPMGビジネスアシュアランスの 田口篤 執行役員・ディレクター
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写真2 BCMの対象業務を絞り込む
写真2 BCMの対象業務を絞り込む
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写真3 業務停止を許容できる時間を分析する
写真3 業務停止を許容できる時間を分析する
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 4月20日,東京都内で開催された「ディザスタ・リカバリ・カンファレンス2007」でKPMGビジネスアシュアランスの田口篤 執行役員・ディレクターが講演(写真1),企業が取り組むべき「BCM」(事業継続マネジメント,Business Continuity Management)について説明した。

 田口氏は「近年,企業を脅かすリスクが多種多様化している」と指摘。具体的には,従業員や役員の不祥事,市場の急激な縮小,企業買収,事故や災害など,さまざまなリスクがあるとする。田口氏によれば「会社経営とはリスク・マネジメントそのもの」である。

 そのような中でBCMの役割は,「突然の業務中断」が発生した場合を想定し,あらかじめ復旧・継続手段を確保しておくことだ。突然の業務中断とは,地震,火災,水害などの災害や大規模なシステム障害,鳥インフルエンザやSARSといった伝染病など。戦争の発生や隕石の落下といった事態に関しては「これらについてもよく質問されるのだが,あまりにも想定しづらい。現実味を考えると,(想定する対象からは)除外することになる」(田口氏)。

 田口氏によると,BCMの実現のためには4種類の事項を決定・分析する必要がある。(1)対象業務の絞り込み,(2)対象業務はどれくらいの期間であれば停止可能か,(3)対象業務の停止を招くリスクは何か,(4)BCMにどれくらいのコストをかけるのか---である。

 対象業務の絞り込みは収益への影響,契約上の罰則,会社の評判などを考慮して選抜する。絞り込まれた結果,「対象業務は多くても数個」(田口氏)になるという。多くの場合,それらはその企業のメイン事業だ(写真2)。その後,それらの業務がどの程度の期間であれば停止を許容できるかを評価する(写真3)。同時に,現在の社内の体制で業務の復旧にかかる時間を見積もる。

 重要なのは,「停止を許容できる時間」よりも「復旧するまでにかかる時間」が長かった場合だ。そしてこの時間のギャップを解消し,許容時間内に復旧できるようにするのがBCMの具体的な施策となる。「業務を1週間で復旧させたいのに半年かかるケースもある。私が経験した例では,ある業務で外国製の特注品を使っていた。それが壊れてしまうと注文発注の製品なので復旧までに半年かかる」(田口氏)。このような場合は,あらかじめ代替しやすい汎用品への切り替えを検討する必要がある。

 田口氏は「BCMはお金がかかるし,一部門では決め切れないことの連続。経営陣のトップダウンのアプローチが大切だ」と講演を締めくくった。