写真1●HitwiseのGeneral ManagerであるBill Tancer氏
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 Web 2.0の華であるUGC(User Generated Contents,ユーザー作成コンテンツ)。オンライン百科事典の「Wikipedia」や動画投稿サイトの「YouTube」,写真投稿サイトの「Flickr」などに投稿されているUGCの多くは,35歳以上の男性が投稿しているようだ。

 インターネット調査会社の米HitwiseのGeneral ManagerであるBill Tancer氏(写真1)が,4月17日(米国時間)に行われた「Web 2.0 Expo」の基調講演でこのような興味深い統計データを明らかにした。

 Tancer氏は,プロフィールに「data geek」と書くほどのデータ好き。「ここにいるみんなもそうだろう」と語りながら,同社がモニター調査によって集めたWeb 2.0に関する統計を明らかにし始めた。

 まず同氏が示したのは「Web 2.0サイト」への訪問者数が,この2年間に6倍に増えている点だ(写真2)。Web 2.0サイトの代表格であるWikipediaと,既存の百科事典をベースにした「Encarta」のWebサイトを比較すると,その差はさらに顕著になる(写真3)。また写真3に示した図の右側の円グラフは「教育の場で参照される割合」を示しており,Wikipediaが1位で,質問サイトの「Yahoo! Answers」が2位になった。「Wikipediaをそのまま信じて参照する学生が多いらしい」という懸念が実証された格好だ。

 
写真2●訪問者数が急増しているWeb 2.0サイト
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  写真3●Wikipediaの訪問者数はEncartaを圧倒した
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写真4●Kodakのサービスよりも強いFlickr
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 写真分野でも,Web 2.0サイトであるFlickrの伸びが,米Kodakのアルバム・サイトの伸びを大きく上回っている(写真4)。現在では「写真分野のWebサイト訪問者の56%がWeb 2.0系の写真サイトに集中している」(Tancer氏)という。


訪問者は急増しているものの参加率は……

写真5●「参加率」はいずれのWeb 2.0サイトも低水準
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 このように訪問者数を大きく伸ばしているWeb 2.0サイトだが,訪問者のうち,どれだけコンテンツをアップロードしたり編集したりしているかという「参加率」で見ると状況は少し違ってくる。Tancer氏によれば,Hitwiseの調査では「参加率は,YouTubeが0.16%,Flickrが0.2%,Wikipediaが4.59%だった」という(写真5)。

 さらに参加率を世代や性別で分類すると,より興味深いデータが導き出された。例えば,写真6はWikipediaを「閲覧」しているユーザー(上)と「編集」を行ったユーザー(下)を,それぞれ世代別に比べてみたものだ。これによると,Wikipediaを「閲覧」しているユーザーに世代別の偏りはない。18~24歳の若者でも25.89%を占めている。これに対して,18~24歳のユーザーで「編集」した人に占める割合は4.68%にまで低下する。逆に55歳以上は「閲覧」に占める割合は11.33%と低いが,「編集」に占める割合では25.59%にまで高まる。Wikipediaの場合,総じて35歳以上による「編集」が多いことが分ったのだ。

 YouTubeにおける傾向も示された(写真7)。YouTubeへの訪問者に占める割合では,18~24歳の比率が30.55%と高い。しかしビデオをアップロードした人に占める割合でみると,18~24歳の占める比率は1.34%と急激に落ちる。YouTubeに最もビデオをアップロードしている世代は35~44歳で,その割合は35.65%だった。

 
写真6●Wikipediaの「閲覧」と「編集」を世代で分析
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  写真7●YouTubeの「訪問」と「投稿」を世代で分析
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写真8●Web 2.0サイトにおける「訪問」と「参加」に占める男女比
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 男女比に関しても,同様に興味深いデータが示された。WikipediaもYouTubeも,訪問者数に占める男女比はほぼイコールだ(写真8)。しかし「参加者」に占める比率は,男性に大きく偏る。Wikipediaの場合で「編集」の60%,YouTubeの場合で「ビデオのアップロード」の75%を男性が占めた。これらのデータを総合すると,Web 2.0サイトのUGCを担っているのは比較的年齢の高い男性,つまり“中年男性”である事実が浮かび上がる。

 HitwiseのTancer氏は,もう1つのデータを示した。それは「Web 2.0サイトでは,勝敗が非常に早く決する」ということだ。その説明に使用したのは,YouTubeに関するデータだ。YouTubeの登場以前,ビデオ分野で人気のあるサイトは,1位が「Yahoo!」の動画サイトで,2位が「Google Video」。しかしYouTubeの登場からわずか6週間で,GoogleもYahoo!も抜き去られたという。Tancer氏は,「Web 2.0サイトにとって重要なコンテンツを投稿するようなユーザー層は,かなり初期の段階で『どのサイトを使うか』を決めてしまう」ことが,このような短期決戦現象を生じさせるのだと分析した。

 なお「Web 2.0 Expo」の基調講演では,Hitwiseに続き,米TechnoratiのDavid Sifry創業者兼CEOも統計データを基にした講演を行った(関連記事)。