写真:米GoogleのEric Schmidt会長兼CEO(左)とジャーナリストのJohn Battelle氏
写真:米GoogleのEric Schmidt会長兼CEO(左)とジャーナリストのJohn Battelle氏
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 「(米Googleが米DoubleClickを買収することによって独占が発生するという米Microsoftや米AT&Tによる主張は)間違っている。GoogleとDoubleClickが広告業界で占めるシェアは1%に過ぎない。またインターネット広告は成長産業であり,選択肢はたくさん存在する」--米GoogleのEric Schmidt会長兼CEOは4月17日(米国時間),サンフランシスコで開催中の「Web 2.0 Expo」の基調講演でこう主張した。

 Schmidt氏による基調講演は,ジャーナリストのJohn Battelle氏(米Federated Media Publishingの会長兼発行人で「ザ・サーチ」の著者)との質疑応答という形式で進行した(写真)。冒頭の発言は,Battelle氏が「GoogleによるDoubleClickの買収が,広告市場における独占を招くとMicrosoftが批判している」(関連記事)という質問に対して行われたもの。Schmidt氏は「Microsoft? MicrosoftとAT&Tじゃなくて?」と述べたうえで,冒頭のように「彼らは間違っている」と主張した。

巨大化するGoogleに対する戸惑い

 質問者であるBattelle氏は,Microsoftなどが持つ「懸念」を述べる前に,自身が持つ懸念をSchmidt氏に対して投げかけていた。Battelle氏は,「私の会社は,GoogleとDoubleClickの双方の広告サービスを使っている。この両社が合併することで,私の会社の情報がGoogleに知られ過ぎてしまうのではないだろうか」という質問や,「(Googleが無料で提供している)Googleパックに,(ユーザーの行動分析に使用する)DoubleClickのCookieを入れたりしないのか」という質問を行ったのだ。

 Schmidt氏は前者の質問に対しては「心配は不要だ。ターゲット広告のために集めた情報を,Googleの他の事業で利用することはない」と,後者の質問に対しては「Googleパックにはサードパーティ製アプリケーションも含まれているし,Cookieを入れるようなことは考えていない」と答え,いずれの懸念も否定した。

 Battelle氏は世界有数の「Googleウォッチャー(著書の「ザ・サーチ」はGoogleを取り上げたドキュメンタリー)」であるからか,他にも厳しい質問を投げかけていた。例えばBattelle氏は,「確か2004年ごろ,(Googleの共同創業者である)Sergey Brin氏はDoubleClickのことを『押しつけがましい広告』であり,自社ではあのような広告を行わないと主張していたはずだ」と,GoogleによるDoubleClickの買収は整合性に欠けるのではないかと指摘した。

 それに対してSchmidt氏はこう答えている。「Googleには4つの側面がある。1つ目はスーパー・コンピュータ上で稼働するアプリケーション・サービスを提供していること,2つ目は検索サービスというソリューションを提供していること,3つ目は広告サービスを提供していること,4つ目は文化に貢献していることだ。われわれはこの2年間,3つ目のカテゴリである広告ビジネスを成長させる方法を考えてきた。ラジオ広告やテレビ広告も視野に入れている。YouTubeを買収したのは,オンライン・ビデオを広告媒体として取り込むためだ。DoubleClickは2004年にターゲティング広告に特化し始めており,優れた広告技術を持っているし,多くの会社がDoubleClickの広告サービスを利用している。GoogleがDoubleClickを買収することによって,広告サービスの幅の拡大や,ターゲティング広告の精度向上,広告サポート・ツールの機能向上が見込める」(Schmidt氏)。

 Battelle氏による「DoubleClickを31憶ドルという巨額で買収したのはなぜか」という質問に対しても,「それだけの価値があるし,Googleは豊富なキャッシュフローを持っている」と,DoubleClick買収の意義を強調した。

オフィス分野ではMicrosoftと競合していない

 このほかの質疑応答を紹介しよう。Googleは17日にも,Webブラウザをユーザー・インタフェースに使うオフィス・アプリケーション「Google Docs & Spreadsheets」に,プレゼンテーション機能を追加することを明らかにするなど,オフィス・アプリケーションの機能強化を進めている。これに関してBattelle氏は「Microsoftと競合するのではないか」と質問した。

 この質問に対してSchmidt氏は「Google Docs & Spreadsheetsは,Microsoft Officeが持つすべての機能を実装しているわけではない」と,Microsoftとの競合を否定した。またSchmidt氏は「Microsoft Officeは,情報を管理するためのソフトウエアだ。それに対してGoogle Docs & Spreadsheetsは,カジュアルに情報を共有するためのソフトウエアである。つまり『Web 2.0』のアプリケーション・フレームワークなのだ」と,Google Docs & Spreadsheetsが単なるオフィス・ソフトではない点を強調している。

モバイル分野に興味がある

 このほかBattelle氏は,Schmidt氏に対して「Googleは現在,どのような分野に興味を持っているのか」と質問した。Schmidt氏は「具体的な戦略を話すことはできないが,許される範囲で述べるならば,モバイル分野に興味がある」と述べた。

 そのうえでSchmidt氏は「これからはますます,人々がモバイル・デバイスとして利用するようになるだろう。モバイル・デバイスは,きわめて個人的な存在であり,どこにでも持って行けるという特徴がある。これから第三世代携帯電話網,第四世代携帯電話網が普及することによって,モバイル・デバイスは途方もなく大きい(tremendous)力を持つことだろう。Googleとしては,モバイル・デバイス向けにアプリケーション・サービスや広告サービスを提供していく。特に広告サービスは,よりローカルな存在になる。ユーザーがどこの通りを歩いているか把握したうえで,その場所に適した広告を提供できるようになるだろう」と述べている。