米Adobe SystemsのChief Software ArchitectであるKevin Lynch氏は4月16日(米国時間),「Web 2.0 Expo」の基調講演で,Adobeのデスクトップ・アプリケーション実行環境「Apollo(開発コードネーム)」上で動作するアプリケーションを披露した。オークション・サイトの「eBay」や,Webアプリケーションの「SalesFource.com」のデスクトップ用アプリケーションや,ワード・プロセッサの「Buzzword」などで,「Apolloのアプリケーションは,オンラインでもオフラインでも利用可能だ」(Lynch氏)とアピールした。

 AdobeのApolloでは,FlashやHTML,JavaScriptを使ってデスクトップ・アプリケーションが開発できる。Lynch氏によればApolloの特徴は,(1)ローカル・ファイルが利用できること,(2)ネットワークがオンラインかオフラインかを検出できること,(3)ドラッグ&ドロップやクリップ・ボードが利用できること,(4)マルチウインドウに対応していること──などであるという。

 Windows VistaやWindows XPの「.NET Framework 3.0」における「Windows Presentation Foundation」と同じ位置付けの技術だが,Apolloの場合はWindowsだけでなくMac OS XやLinuxにもデスクトップ実行環境が提供されている。今回のLynch氏のデモも,ほとんどがMac OS X上で実施された。Windowsも一度だけ登場したが,同じアプリケーションがWindows上でも実行できることを示しただけであった。

 Lynch氏はまず,オークション・サイト「eBay」のサービスを利用できる「eBayアプリケーション」を披露(写真1)。オークションにかけられている商品を検索したり,オークションに出品する商品を登録したりできる。Lynch氏は基調講演のその場で,eBayアプリケーションを使ってeBayに商品を登録してみせた(写真2)。eBayアプリケーションは,オフライン環境でも利用可能で,これまでに検索した商品を閲覧したり,商品を登録したりできる(登録した商品はオンライン復帰後に自動的にeBayに登録される)。

写真1●「eBay」のサービスを利用できる「eBayアプリケーション」
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写真2●MacBook内蔵のカメラでWeb 2.0の入場者バッジを撮影して,それをオークションに出品してみせた
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 続いてLynch氏は,Apollo版の「SalesForce.comアプリケーション」(写真3)や,ワープロ・ソフトの「Buzzword」(写真4),オンライン・メディアの視聴に特化したメディア・プレイヤー「Adobe Media Player」(写真5)などを披露した。

写真3●顧客ごとの接触状況などをグラフで把握できる「SalesForce.comアプリケーション」
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写真4●テーブルにも対応しているワープロ・ソフト「Buzzword」
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写真5●RSSを使ったビデオ配信に対応した「Adobe Media Player」
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 実はLynch氏の講演は,10分という限られた時間でApolloの特徴を説明するというものだった。10分間では様々なアプリケーションを駆け足で披露するのが精一杯だったが,Apolloがアプリケーション実行環境として完成しつつあることは強烈に伝わった。Apolloは現在アルファ・テスト中で,2007年中に完成版がリリースされる予定だ。