経済産業省は4月13日、ユーザー企業がシステム開発をITベンダーに委託する際に用いる契約書のひな型(モデル契約書)の正式版を公開した。同省のWebサイトにアクセスし、『情報システム信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会」最終報告書』をダウンロードして入手できる。

 同省は1月16日に、モデル契約書のベータ版を公開していた(関連記事)。その後、約1カ月にわたって募集したパブリック・コメントを基に、契約書の文面などを見直したものが、今回の正式版である。ベータ版からの変更点は、誤解を招きそうな契約条項に解説文を追記したり、契約文面の一部を分かりやすい表現に改める程度にとどまっている。

 モデル契約書のポイントは、ユーザーやベンダーの役割・責任分担を明確に示したこと。例えば、要件定義や外部設計までの上流工程、納品後の運用テストは、委託先が仕事の完成義務を負う「請負」型ではなく、発注者であるユーザー企業が主体となる「準委任」型とする。最近のシステムは要件が固まりにくく、ユーザーがベンダーに“丸投げ”するようでは、プロジェクトが円滑に進まないとの判断からだ。

 モデル契約書には、作業委託やシステム要件の変更時に用いる指示書のひな型も付属している。新規契約時だけでなく、既存の契約書や指示書に潜んでいる“あいまい”性を見つけ出すためにも、今回のモデル契約書は参考になる。

 経産省は「IT関連の紛争が増加・深刻化しているのは、契約段階で責任を明確化していないため」との認識から、昨年6月からモデル契約書の策定を進めてきた。ユーザー企業のシステム部長やベンダーの法務担当者、IT分野に詳しい弁護士など約30人が、モデル契約書の策定に携わった。