通信関連の4業界団体で組織する「電気通信サービス向上推進協議会」は、携帯電話やPHSなどにまつわる広告表示の自主ルールを強化する。携帯電話の料金やサービス内容に関する苦情が社会問題化したことを受けたもの。携帯電話だけでなく、固定電話事業者やインターネット接続事業者(ISP)、ケーブルテレビ事業者など、広く通信業界全体に新ガイドラインを適用する考えだ。

 同協議会は、テレコムサービス協会と電気通信事業者協会(TCA)、日本インターネットプロバイダー協会、日本ケーブルテレビ連盟で構成。広告表示関連の作業部会を設置し、広告表示に関するガイドラインを2003年に策定し運用している。2006年末に、ソフトバンクモバイルのいわゆる「0円」広告などが問題となり、公正取引委員会や総務省から行政指導を受けたことを踏まえ、現行ガイドラインの改定作業に取りかかっている。既に携帯電話事業者らによる見直し作業をほぼ終えており、2007年5月に草案を発表し一般消費者からの意見を募集。これを踏まえ、6月末にも新ガイドラインを正式決定する見込みだ。

テレビは1行30文字内で2秒以上

 今回の改定の柱は、携帯電話の料金表示にまつわる基準の全面見直し。広告の一部で、割安な料金の部分のみを強調し制約条件を明確に説明しなかったり、本文と注釈が離れた位置にあって確認しづらかったりといった、有利誤認を招く恐れのある広告表示を制限する。具体的には、サービスの主な内容を広告で表示する際、(1)テレビ広告では1行30文字以内の大きさの文字で2秒以上表示する、(2)新聞や雑誌では文字サイズを8ポイント以上とする、(3)カタログには判読可能なサイズで表示し、文字が小さくなる場合は赤字や下線などで見やすくする――など、文字表示に具体的な基準を設ける。

 また、現行ガイドラインの項目も強化する。「分かりやすい広告表示に努める」という規定を「分かりやすい広告を行う」に改める、「重要な前提条件または制約条件を正しく表示する」という規定を新設する、「業界ナンバーワン」「当社だけ」「最高品質」などの表現を使う際に、客観的事実による裏付けを求める、といった内容を盛りこむ。

 「サービスエリア」の定義も厳格化する。現行ガイドラインでは、市町村の役所・役場がサービスエリア内になると、その市町村全域をサービスエリアとみなすため、「圏外の市町村が、市町村合併に伴って圏内とみなされるケースが出てきている」(電気通信サービス向上推進協議会 会長代行の桑子博行氏)。こうした実態との不整合を解消するため、面積や戸数など他の基準も考慮に入れる。

ケータイだけではおさまらない

 今回の見直しは、当初は携帯電話・PHSを対象として議論されてきたが、「携帯電話と固定電話やISP事業を複合的に手掛ける事業者があることや、今後MVNO(仮想移動体通信事業者)やFMC(fixed-mobile convergence:固定・移動通信一体型サービス)が興隆してくることを踏まえ、通信業界全体に向けた広告ガイドラインの見直しとした」(桑子氏)。具体的には、(1)無料/割引サービスの提供期間や対象者、適用条件などを明記する、(2)広告で表示しているサービス料金以外に賦課される費用を明記する、(3)消費者がサービスを申し込んでから実際の提供開始までに要する期間を明確化する――ことを、全通信事業者に求める。

 これらのガイドラインについて、業界全体に周知徹底を図る目的で、学識経験者や弁護士、消費者団体代表、広告業界関係者などから成る、第三者委員会を設置する。通信サービス関連の広告でトラブルが発生した場合に、日本広告審査機構(JARO)や国民生活センターなどからの連絡を受け、内容を協議する。広告を出稿した通信事業者への対応を決めるほか、必要に応じて同業他社への周知やガイドラインの見直しなどを行う。