富士通研究所は4月13日、既存システムの利用状況を基にビジネス・プロセス図を生成する技術を開発したと発表した。複数のシステムをまたがるビジネス・プロセスを描けることが特徴で、「世界で初めての技術」と富士通研究所の上原三八取締役は胸を張る。抽出したビジネス・プロセス図から業務改善のコンサルティングにつなげるのが目的だ。
今回発表した技術は大きく3つある。データベースのアクセス・ログから「複数のシステムがいつ、どんな順番で使われたか」を抽出する「イベント抽出技術」、そのログからビジネス・プロセス図を描く「プロセス生成技術」、描いたビジネス・プロセス図から業務の改善点を導く「プロセス分析技術」だ。
イベント抽出技術では、複数のデータベース・ソフトのアクセス・ログから、アクセス時刻、更新したデータ名、データIDという3種類のデータを基に、ログ間の関係性を自動で洗い出す。これにより、見積もり、受注、生産といったビジネス・プロセスを構成するイベントがどの順番で発生していたのかを類推する。
イベントを時系列につなぐことによって、ビジネス・プロセス図を描画する機能がプロセス生成技術だ。プロセス図上では、抽出したビジネス・プロセスを重ね合わせていく(写真1)。すべてのビジネス・プロセスを画面上に重ね合わせると、複雑になりすぎてしまうため、出現頻度の高いプロセスだけを残すことができる。これがプロセス分析技術だ。これにより、主なビジネス・プロセスと例外的なビジネス・プロセスを把握できる。
さらに、より高度な分析も可能だ。省略したビジネス・プロセスの中から、「特に繰り返しが多い部分」、「出現頻度が著しく低い部分」などを検索できる(写真2)。繰り返しが多ければ業務上の無駄が発生している可能性が高く、出現頻度が著しく低ければ、不正な処理をしている可能性がある。
従来からある似た技術に、プログラムのソース・コードからプロセス図を記述するリバース・エンジニアリングがある。しかし原裕貴ソフトウェアイノベーション研究部長は、「プログラムの分析ではなく、業務の分析に使うことが大きく違う」と説明する。また、「リバース・エンジニアリングで分かるのは、システム構築時の設計情報で、いわば静的な情報。これに対し今回の技術は利用実態を把握するので、動的な情報を扱う」という。
開発の段階で、海外企業を含む10以上のシステムに適用し、ビジネス・プロセス図を作成した。富士通は同技術を用いた業務分析サービスを2007年度中にも開始する予定だ。