事業者ごとの携帯電話契約の純増数推移(TCAの資料を基に日経パソコンが作成)
事業者ごとの携帯電話契約の純増数推移(TCAの資料を基に日経パソコンが作成)
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 電気通信事業者協会(TCA)は2007年4月6日、2007年3月末時点の携帯電話契約数を発表した。総契約数は対前月末比95万5600件増の9671万7900件。例年3月は新年度を控えた商戦期で、年間で最も契約数が多くなる時期である。今回は携帯電話番号ポータビリティー(MNP)制度開始以来、初の春商戦であったが、2006年3月の純増数(102万4300件)は下回り、100万件の大台にも届かなかった。事業者別内訳では、KDDIが引き続き好調。NTTドコモが5カ月ぶりに純増数でソフトバンクモバイルを上回り、復調ぶりを鮮明にしている。2007年3月31日に商用サービスを開始した新規事業者のイー・モバイルは契約数を明らかにしなかった(発表資料)。

 KDDIは、対前月末比53万件増の2818万8300件。うち「au」ブランドが71万1700件増の2731万6800件、「ツーカー」ブランドが18万1700件減の87万1500件だった。「auブランド単体、auとツーカーを合わせたKDDI全体ともに過去最高の伸びを記録した」(KDDI広報部)。ワンセグ受信機能を備えた「AQUOSケータイ W51SH」「MEDIA SKIN」と、子供向け端末の新製品「ジュニアケータイ A5525SA」が2007年3月に発売となり販売好調だった。これに加え、「他社の契約者で年間契約の更新時期が3月になっていた人たちが、当社へ多く転入してきた」(KDDI広報部)ことが、純増数の押し上げに貢献したとみられる。

 NTTドコモは、対前月末比29万8000件増の5262万1100件。純増数が20万件を超えるのは2006年4月以来11カ月ぶりである。春商戦向けに投入した低価格機「FOMA 703iシリーズ」が引き続き堅調。加えて、「2007年2月末に『P903iTV』『AQUOSケータイ SH903iTV』を発売し、ワンセグ受信機能付き端末のラインアップが3機種になった。ワンセグ端末は2006年春に1機種出して以来、2007年2月まで新機種の発売がなかったため、ワンセグ端末の新機種を待っていたユーザーが多く購入した」(NTTドコモ広報部)ことも背景にある。端末内蔵のフルブラウザーによるパソコン向けWebサイト閲覧を定額制の対象とした新サービス「パケ・ホーダイフル」も好調という。

 ソフトバンクモバイルは、対前月末比12万7600件増の1590万8500件。3カ月連続で10万件超の純増数を記録したが、KDDIやNTTドコモが純増数を大幅に伸ばしたのと比較すると、純増数の伸びは小幅になっている。2007年1月、同2月に引き続きホワイトプランがけん引しているという。「同プランでは、夜間以外のソフトバンクモバイル端末宛て通話が無料になることを訴求し、『友達紹介キャンペーン』を展開した。キャッシュバックなどの特典を付けたこともあり、好調に推移している」(ソフトバンクモバイル広報部)。端末では、ハイエンド機の「911T」の引き合いが強いという。

 なお、MNP制度を利用した同番移行による契約数の増減は、KDDIが14万8200件の転入超(auが15万4800件の転入超、ツーカーが6500件の転出超)、NTTドコモが11万700件の転出超、ソフトバンクモバイルが3万7700件の転出超(転入が8万400件、転出が11万8100件)だった。

 PHS事業者のウィルコムは、対前月末比9万3000件増の452万7100件だった。

 2006年度(2006年4月~2007年3月)の純増数を足し合わせると、KDDIが274万9800件、NTTドコモが147万7500件、ソフトバンクモバイルが69万8600件。MNP開始前の上半期はKDDIとNTTドコモが拮抗していたが、MNP開始後はKDDIが圧倒的な強さを発揮。最終的には純増数で100万件以上の差を付けた。2007年3月末の総契約数に占める各社のシェアは、NTTドコモが54.4%、KDDIが29.1%、ソフトバンクモバイルが16.4%。2006年3月末に比べ、KDDIが1.4ポイント増やし、NTTドコモが1.3ポイント減らした。ソフトバンクモバイルは下半期に契約数を伸ばしたものの、シェアは0.2ポイントの微減となった。

 イー・モバイルの契約数が非公表となっていることについて、TCAは「当協会としては毎月公表してもらえるものと考えていたが、イー・モバイルの意向により公表しないことになった。NTTドコモやKDDI、ソフトバンクモバイルには(イー・モバイルが公表しないことに関して)了解を取っている」と説明している。イー・モバイルは、「スタートアップということもあり、2007年度は四半期決算に合わせて3カ月ごとに契約数を公表していきたいと考えている。いずれ契約数が増えてくれば月次での公表も考えたいが、当社は2007年度末で30万件の契約が目標。数百万件の契約を持っている他社とは状況が異なる」(イー・モバイル広報室)として理解を求めている。