総務省「新地方公会計制度実務研究会」の報告書公表が、3月末の予定から6月以降に延期された。当初は昨年12月に予定していた報告書とりまとめ作業が遅れているため。自治体に配布予定の会計用ソフトも、「現段階では完成時期は未定」(総務省財務調査課)である。

 時間がかかっているのは、報告書に付随するマニュアルの作成。総務省では、昨年7月から今年2月にかけて岡山県倉敷市と静岡県浜松市で実証的検証を行った。浜松市では「総務省方式改訂モデル」(3章方式)、倉敷市では新たに定めた「基準モデル」(2章方式)について、それぞれ表示科目の選定や効率の良い作成の手法などの検討を進めてきた。現在こうした検討結果を基に、それぞれの方式についてマニュアルを作成している。

 現在は、2市での検証の結果提示された、固定資産の取得価額に含める人件費や補償費など経費の範囲をどうするか、どんな資産を売却可能資産として定義するか、といった細かい課題の解決を図っている。加えて、自治体同士での比較を可能にするため、2方式で異なっている表示科目をできるだけ同じ呼称に統一し、それができない科目に関しては対照表を作成する作業を進めている。報告書の公表が遅れているのも、こうした作業に当初の予想以上の時間がかかっているためのようだ。

 総務省は昨年5月に、全国の自治体に対して一部の例外を除き、原則として3年以内に「貸借対照表」「行政コスト計算書」「資金収支計算書」「純資産変動計算書」の財務4表を作成するよう求める通知を出している。各自治体は、「総務省方式改訂モデル」「基準モデル」のいずれかを選び、遅くとも2008年度決算の数字を元に2009年度中に4表を作成することが求められる。

 総務省方式改訂モデルは、現在の自治体の標準的な決算方式である単式簿記決算の数字を組み替えて財務諸表を作る方式。これまでの総務省方式を踏襲しており、基準モデル方式より簡単に作成できる。ただし、伝票を起こした時点で複式簿記の作成に必要な情報入力を行わないため、どんな支出の結果どの資産が増えたかということを完全に把握することはできない。また資産評価は、1つ1つの資産でなく、生活インフラ、消防など科目単位で行う。
 
 基準モデルは、1件の支出や収入があるごとに、複式簿記作成に必要な情報も入力する。予算から決算まで連動しており、1枚の伝票までさかのぼって検証できる。また資産評価は、資産1つ1つに対して実施する。損失が生じた場合にその原因を伝票のレベルまで追求できるなど、会計制度的により優れた方式であることは間違いないが、起票する際に入力する項目が増えるなど自治体側の負担も大きくなる。

 現実的に考えると、ハードルの低い総務省方式改訂モデルを選び4表を作成する自治体が多いと予想されるが、「最終的には各自治体の判断になるが、都道府県や政令指定都市には基準モデルを選んで欲しいという希望はある」(財務調査課)としている。

■変更履歴
記事本文で「総務省「新地方公会計制度実務研究会」の報告書公表が、6月以降に延期された。今回で2度目の延期となる。当初は昨年12月に公表する予定だったが、一度今年3月末に延期された経緯がある。」とありましたが、正しくは「総務省「新地方公会計制度実務研究会」の報告書公表が、3月末の予定から6月以降に延期された。当初は昨年12月に予定していた報告書とりまとめ作業が遅れているため。」でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。[2007/05/23 21:05]