2007年1月から実運用が始まったユニバーサルサービス制度の見直しが,急きょ前倒しで進められることになった。諮問機関の情報通信審議会が3月30日,ユーザー負担の抑制を狙い,ユニバーサルサービス制度の補てん対象額の算定ルールの見直しを総務省に要求したためだ。

 発端はNTT東西地域会社の接続料。2007年度の接続料の変更に際して実施した意見募集で,「各事業者は接続料負担の軽減を享受する一方,ユニバーサルサービス制度の負担金をユーザーに転嫁しているのは大きな問題。今後も負担金の増加が予測されるため,早急な見直しが必要」とする声が主婦連合会などから寄せられた。

 NTT東西の接続料は2005年度から算定方法が変わり,それまで接続料として徴収していた「NTS(non-traffic sensitive cost)コスト」を向こう5年間にわたって段階的に除外している。NTSコストは2005年度の実績通信量ベースで約3200億円。これにより,各事業者がNTT東西に払う接続料は軽減される結果となった。

 しかし,除外した分は基本料に付け替えられるため,NTT東西の基本料収入の悪化につながっている。加入電話の基本料にのしかかる費用は東西NTT合計で年間約400億円にも及ぶ。このNTSコストの付け替え分が毎年上乗せされていくため,ユニバーサルサービス制度の東西NTTへの補てん額は今後増えていくことが確実となっている。

 本日開催された情報通信審議会電気通信事業部会では,「もともとユニバーサルサービス制度を決めたときの議論では事業者が負担するものと考えられていた。負担金をユーザーに丸々転嫁するのは問題」(長田三紀構成員),「フタを開ければほとんどの事業者が負担金をユーザーに押し付けている。皆で転嫁すれば恐くないという状況」(高橋伸子構成員)といった批判が飛び交った。実際,電気通信事業者協会(TCA)によると,負担対象となっている事業者53社のうち,50社がユーザーに転嫁している(3月5日時点,関連情報)。

 そこで情報通信審議会は総務省に対し,以下の要望を出すことにした。(1)ユーザー負担の増加を避けるため,2008年1月以降のユニバーサルサービス制度の補てん対象額の算定ルールを見直すこと,(2)「ユニバーサルサービス制度の将来像に関する研究会」で議論している2010年以降のユニバーサルサービス制度の見直し(関連記事)についても可能な限り前倒しで進め,早急に結論を出すこと──の2点である。また各事業者に対しても「ユーザーの負担を可能な限り抑制する方向で検討すること」を求めた。

 総務省はこの要望を受け,ユニバーサルサービス制度の将来像に関する研究会とは別の場を設け,算定ルールの見直しに入る予定だ。2008年1月以降の負担金と交付金は,2007年9月中にTCAが申請する決まりになっている。算定ルールを変更して省令を改正する前には約1カ月の意見募集を実施する必要があるため,逆算すると7月までの約4カ月間で結論を出す必要がある。ただ総務省は「現段階で具体的な施策は決まっていない」としている。