総務省は3月26日,2.5GHz帯を利用した固定無線システム(FWA)の技術的条件を議論する「広帯域移動無線アクセスシステム委員会」の第7回会合を開催した。今回は作業班の検討結果の報告を受けた。報告では,モバイルWiMAXなどの無線ブロードバンド・システムで,遠くまで電波が届くアンテナの利用が可能であることが示された。その結果,無線ブロードバンドを使ったデジタルデバイド対策がより安価に実現できる可能性が広がった。

 総務省は,今後2~3日中に今回の作業班の結果をまとめた報告案をパブリック・コメントにかけ,4月26日の情報通信審議会で一部答申を得る予定だ。

固定利用で電波が遠くまで届くシステムを想定

 この委員会では,(1)高利得アンテナを利用したFWA(固定無線アクセス)システムを導入するための条件と,(2)同一周波数を異なる事業者が共用する場合の条件を議論している。

 (1)のFWAシステムは,ユーザーが移動しながらデータ通信する「モバイル・システム」とは異なり,移動しながらの利用は想定していない。そのため,サイズは大きいが電波が遠くまで届く高利得アンテナを利用できる。これを利用することで,山間部など有線のブロードバンド・サービスが利用できない地域で,無線を使ったブロードバンド・サービスを実現しやすくなる。

 FWAシステムで対象とする通信方式は,モバイルWiMAX(IEEE 802.16e-2005)と次世代PHS。モバイル・システムで対象となっていたIEEE 802.20(MBTDD-Wideband)とIEEE 802.20(MBTDD-625k MC)は,FWAシステムを想定していないため検討の対象から外れた。なお,モバイル・システムの検討は既に終了し,2006年12月に技術条件の一部答申が出されている。

 (2)の「同一周波数を異なる事業者が共用する」とは,離れた地域でサービスを提供する異なる事業者が,同一の周波数を利用する場合を想定している。今回の報告では,基地局と端末を設置する際に周囲に干渉を与えない工夫をすることで,同一周波数の共用が可能になることが示された。具体的には,基地局の設置場所を他事業者のサービス・エリアから数km離す,電波の出力やアンテナの指向性を調整するといった手段が示された。

 これにより,市町村などの自治体単位で免許を出すことへの道筋が示された。市町村単位で免許を受けることに可能になれば,デジタルデバイドに悩む自治体が通信事業者と協力して,地域密着型のサービスを提供することなどが考えられる。

 ただし,総務省がどのような方針で免許を付与することになるかは未定。総務省は技術的条件などと並行で免許方針の検討を進めており,今春に免許方針案を発表する予定だ。