32台のロボットが決勝戦に参加した
32台のロボットが決勝戦に参加した
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家族で参加しているマルファミリーが軽量級の3位決定戦で兄弟対決となった
家族で参加しているマルファミリーが軽量級の3位決定戦で兄弟対決となった
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ROBO-ONEは2010年にロケットで人工衛星を打ち上げて、ロボット対戦させる宇宙大会の開催を予定している。会場ではROBO-ONE衛星の模型が展示された
ROBO-ONEは2010年にロケットで人工衛星を打ち上げて、ロボット対戦させる宇宙大会の開催を予定している。会場ではROBO-ONE衛星の模型が展示された
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ステージ裏がロボットの調整スペースとなっていた
ステージ裏がロボットの調整スペースとなっていた
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韓国から参加の「ICARUS1(GADGET TEAM)は試合前にロボットが動かなくなるハプニング。調整時間2分ごとに1ダウンずつ奪われるというプレッシャーの中、制限時間ギリギリでロボットを駆動させると、会場から拍手が送られた
韓国から参加の「ICARUS1(GADGET TEAM)は試合前にロボットが動かなくなるハプニング。調整時間2分ごとに1ダウンずつ奪われるというプレッシャーの中、制限時間ギリギリでロボットを駆動させると、会場から拍手が送られた
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 2足歩行ロボットの格闘大会「ROBO-ONE」の様子をお伝えするレポートの後編。2日目には格闘戦による決勝トーナメントとなった。予選上位の27組に加えて、日本各地で開催されたROBO-ONE認定のロボット大会で優勝した5組が加わり、計32台が参加した。リング上で2台のロボットが戦い、パンチやキックを繰り出して、相手が倒れると1ダウン。相手から3ダウンを奪うと勝利となる。

 今回から一部のルールに変更が加わった。従来は、バランスを崩して転んだとしても、立ち上がることができれば試合を続行できた。今回からは転倒した場合はスリップダウンとなり、2回のスリップダウンは1ダウンとしてカウントされる。これは、より人間に近い、安定感のある動作を目指すための措置。これによって、歩行や攻撃の安定性に欠けるロボットでは、決勝を勝ち抜くのは難しくなったというわけだ。

 体全体を前に投げ出して相手を押し倒す“捨て身技”も、失敗をすればスリップダウンとみなされる。捨て身技はロボットの全体重を乗せる強力な攻撃手段だが、今回からは技を出したロボット自身がダウンを取られかねないというリスクを持つことになった。

 新ルールでの試合展開は、従来と比べて実に早い。以前の大会では、3分の制限時間内に決着がつかず、延長戦に突入することも多かったが、今回はほとんどの試合が3分以内に終了。技術力が高いといわれるROBO-ONE参加のロボットでも、動きの激しい格闘戦の中では、移動や攻撃のはずみで転倒してしまう。スリップダウンの積み重ねによって試合が決まるシーンが何度も見られた。

 トーナメントは32台を軽量級と重量級に分け、それぞれで優勝を決める。軽量級では、昨年9月の10回大会で優勝した「キングカイザー」が捨て身技の失敗で無念の準決勝敗退。ところが、3位決定戦で意外な対戦相手が待っていた。同じくマルファミリーチームの製作による「キングカイザー・Jr」だ。同チームでは、お父さんのNao氏がロボットを作成し、兄弟のKen君とRyoma君が操縦者として参加している。Ken君が「キングカイザー」、Ryoma君が「キングカイザー・Jr」の操縦士だ。自宅では互いを練習相手としているが、今回は公式戦での兄弟対決となった。相手の動きを見ながら素早く攻撃を繰り出す、緊迫した試合展開となったが、キングカイザー・Jrがリングアウトなどでダウンを積み重ねたところ、兄のKen君が操作するキングカイザーが後ろ向きの捨て身技を冷静に繰り出し、試合を決めた。

 軽量級の決勝戦は「クロムキッド(KUPAKUMA 作成)」と韓国から参加の「Taekwon-V(Taekwon-V 作成)」の対戦。Taekwon-Vは第7回大会で優勝経験のある強豪である。どちらも動きは素早く、自分の攻撃が届く位置を奪い合う攻防が繰り広げられたが、クロムキッドがパンチで2ダウンを奪うと、攻撃後にバランスを崩したTaekwon-Vがスリップダウン。クロムキッドに軍配が上がった。クロムキッドはロボットサッカー大会の「KONDO CUP」にも参加。東京・秋葉原のロボット練習場「ROBO-SPOT」に毎週通って調整を繰り返してきた。サッカーで培った歩行の速度と安定感が格闘戦でも生かされた形となった。

 重量級の決勝戦は、前回大会2位の「ivre(遊氏 作成)」と「ヨコヅナグレート不知火二代目(Dr.GIY氏 作成)」。力と力がぶつかり合う、まさに重量級らしい展開となったが、ivreが攻撃を跳ね返されて場外転落。続くスリップダウンによって、ヨコヅナグレート不知火の勝利となった。

 Dr.GIY氏は、アスレチック競技大会の「ROBO-ONE Special」や上位入賞者限定の格闘大会「ROBO-ONE GP」でも活躍。軽量級で優勝したクロムキッドとの最終戦でも力強いパンチで相手を倒し、総合優勝を手に入れた。今回投入した二代目の機体では、市販品よりも出力を75%強化した特別製のサーボモーターを搭載。圧倒的なパワーを見せた。「今回のルール変更は立ち技主体の『不知火』にとっては有利だった」とDr.GIY氏。以前から、捨て身技に頼らない、人間の格闘技に近いスタイルを貫いてきた。ポリシーを持って築きあげてきた技術が本大会の結果となって実を結んだ。

 本大会ではスリップダウンによって惜しくも敗退したロボットが多く見られたが、これまでもROBO-ONEに登場するロボットはルール改変に適応することで進化を遂げてきた。次回大会では、さらに安定した人間の動きに近いロボットの登場が期待できる。

 ROBO-ONEの次回大会は2007年9月に開催予定。6月30日~7月1日にかけてサッカー大会「ROBO-ONE サッカー」も開催する。サッカー大会は、ロボット初心者も楽しみながら参加できることを目指すという。

軽量級の3位決定戦。「キングカイザー」対「キングカイザー・Jr」
軽量級の決勝戦。緑色の「クロムキッド」と銀色の「Taekwon-V」の対戦
重量級の決勝戦。真ちゅう製のフレームを採用した「ivre」と白いボディーの「ヨコヅナグレート不知火二代目」
軽量級と重量級の総合優勝決定戦。「クロムキッド」対「ヨコヅナグレート不知火二代目