早稲田大学「国際CIO講演会」のパネルディスカッションの模様
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 国際CIO学会(会長・小尾敏夫早稲田大学大学院教授)は3月23日午後、早稲田大学で「国際CIO講演会~イノベーションと内部統制」を開催した。

 パネルディスカッションには、米Googleの日本法人であるグーグル(東京・渋谷区)の村上憲郎社長ら5人が登壇。企業や行政機関のCIO(最高情報責任者)が果たすべき役割や、日本版SOX法(金融商品取引法)で取りざたされている内部統制などについて議論された。

 村上社長は「GoogleにはCIOという役割の人はいない。ただし、内部統制については、すべての社員の年間・四半期ごとの目標や、日々の予定、成果物などを誰でも見られる仕組みがある。『統制』の前に、こうした『透明性』が必要だと考えている」と話した。

 一方で、東京証券取引所の鈴木義伯・常務取締役最高情報責任者は、「CIOは経営陣の一員であるべきだし、経営能力を持った人が務めるべきだ。CIO本人が技術に精通していなくても、技術を知っている人は集めることができる」と話した。

 行政機関のCIOについて、東京工業大学大学院の大山永昭教授(政府IT戦略本部の本部員)は、「行政機関の場合、まずは予算が重要なので、(官房長などの)高いレベルの人がCIOを務めなければならない。ただし、こういう人は当然IT(情報技術)に関する知識がないので、『CIO補佐官』の役割が重要になる。以前はCIOと補佐官の間のコミュニケーションがうまくいかない状況があったが、徐々に改善されている」と話した。

検索エンジンの危険性についても熱い議論

 グーグルの村上社長と、国産の次世代検索エンジン研究にかかわる東京大学大学院の須藤修教授が同席したこともあり、検索エンジンについても議論が集中した。須藤教授は、「よく我々はGoogleに対抗しようとしているといわれるが、むしろ、我々とGoogleの開発者は連携関係にある」と話した。一方で、須藤教授は「Googleは世界中のすべての情報にタグを付けて保有しようとしているのではないか」と話し、村上社長が「保有しようとしているのではなく、あくまで公開されている情報を無加工で整理しようとしているだけだ」と説明する一幕もあった。

 モデレーターを務めた会津大学前学長の池上徹彦氏も、「今日はGoogleを責める場ではないが・・・」としつつ、「Googleに集まる利用履歴や個人情報が悪用されないかどうか心配だ」と話した。これに対して、グーグルの村上社長は、「犯罪行為の追跡調査や利用者の利便性向上のために、最低限の利用履歴は保持している。我々としては、そういう(悪用の)危ぐを払拭しなければならない。特に公権力による介入への対応は重要な課題。米国では、政府から『Googleの検索履歴のデータを出せ』と命じられたときに、当社側が拒否し、裁判でも勝訴した例がある」と説明した。