米AT&T,スウェーデンのEricsson,松下電器産業,ソニーなど9社は欧州時間の2007年3月19日に,IP網を使ってテレビ受像機で映像配信サービスを楽しむ「IPTVサービス」の関連技術の標準化を目指す「Open IPTV Forum」を設立した。フォーラムの標準化活動は,新たな技術規格を開発するのではなく,オープンに利用できる既存の標準技術を組み合わせて高度な映像サービスを実現する仕様を定めることを目標とする。現時点で,ネットワークのアーキテクチャーとしてはNGN(次世代ネットワーク)の基盤であるIMS(IP Multimedia Subsystem)を利用することや,機器間のコンテンツのやり取りにはDLNA(Digital Living Network Alliance)のガイドラインを採用することなどを,検討候補に挙げている。

 一方日本国内では,地上デジタル放送をIPマルチキャスト方式で再送信し,地上波放送の完全デジタル化を支援するという目的の下に,業界関係者の間で技術要件についての意見交換が進んでいる。IP再送信サービスについては,公開の実証実験を行う段階まで要件が固まってきている。

 様々な地域で企業主導の標準化活動が行われることで,標準技術を巡る国際間の主導権争いが生じることも予想される。しかしIPTVフォーラム幹部によれば,「欧州の動きは当面日本には大きく影響しないだろう」という。日本では,電子番組表(EPG)やデータ放送といった付加サービスも含めた放送サービスを,IP技術でも寸分たがわずに実現することに焦点を当てている。これに対し,既に一部の地域でIP同時再送信が実現している欧州では,テレビ受像機と携帯電話機を連携させたり,遠隔地からも自宅の受信機に録画した映像を呼び出したりするサービスに主題が移っている。このように,標準化したい機能が異なっているため,日本と欧州が標準化で競合する可能性は小さいようだ。