政府の2007年度におけるコンテンツ産業の振興政策に,著作権関連の法制度の見直しが盛り込まれる可能性が大きくなってきた。2007年2月27日に開催された経済財政諮問会議で,伊藤忠商事の丹羽宇一郎会長など4人の民間委員が,著作権関連の新たな法制度である「デジタル・コンテンツ流通促進法」の成立を求めたためだ。この提案を受けて政府の知的財産戦略本部は,2009年をメドに新たな著作権関連の法制度を策定する見通しだ。

 デジタルコンテンツの流通促進のために著作権関連の法制度を見直す動きは,一部の法律関係者などの間で活発になっている。例えば2006年3月には知的財産権を得意分野とする岩倉正和弁護士など2人の法律関係者が知財本部に対して,著作権関連の特別法を導入すべきという意見書を提出した。このような動きが,経済財政諮問会議における民間議員のデジタル・コンテンツ流通促進法の提案を後押ししたようだ。

 ただ今後,著作権関連の法制度の見直しはスムーズに進まない可能性がある。日本は「ベルヌ条約」といった著作権関連の国際条約に加盟しており,これらの国際条約と日本の著作権関連の法制度の整合性を保つ必要があるからだ。著作権関連の法制度を所管する文化庁の関係者は,「実現できることとそうでないことを明確にしたうえで,法制度見直しの議論を進める必要がある」と指摘する。これに対して一部の法律関係者は,「国際条約の加盟国も著作権関連の法制度の一部は独自に策定できる」としたうえで,「日本はコンテンツの流通を促進するための法制度を他国に先行して導入すべき」と主張している。